小安峡大噴湯おやすきょうだいふんとう

JR奥羽本線湯沢駅から南東へ約30km、栗駒山(標高1,626m)西麓を流れる皆瀬川の上流に、約8kmの険しいV字谷の小安峡がある。その谷底の川岸には、轟音とともに98℃の熱湯を噴き出す大噴湯があり、高低差60mほどを降りると、その先に渓流沿いの遊歩道が続く。この遊歩道は上流、下流2個所の駐車場から降りることができ、徒歩片道30分ほど。岩壁から湯が湧き出し、流れ落ち、噴気孔から蒸気が激しく噴き出している様を間近に観察できる。江戸後期の紀行家、菅江真澄もこの地を訪れ、高い岩壁を下ると「割湯とて湯を吹出ある事三四丈(9~12m)斗り、瀧川を聲てあなたの巌にあたりて霧となりて散りぬ、割湯の巌竅(あな)ごとに湯氣の雲を起こして、雷神のひびきして大なる水はぢきのごとく湯が吹出たり」と噴気の激しさを描写している。
 渓谷に沿って高台を走る国道398号沿いには、温泉宿が10軒ほど点在する。開湯*1は江戸初期とも伝えられている。泉質は含芒硝弱食塩泉、98℃。無料で利用できる足湯も3ヶ所ある。
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みどころ

まず、深いV字谷を眺望するのには、下流に架かるアーチ状の河原湯橋から見下ろすのがよい。峡谷からは大噴湯の白煙があがり、新緑や紅葉に映える。岩壁のいたるところから、湯水が流れ落ち、噴気も見られる。「シュー、シュー」と熱湯と蒸気の噴出が激しいところが「大噴湯」で、遊歩道にまで噴気が及び、前を歩く人の姿が見えなくなるほどだ。まさに大地の息吹を直かに感じ取れる。
 なお冬期間(11月上旬頃〜4月下旬頃)、遊歩道は通行禁止となる。
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補足情報

*1 開湯:1894(明治27)年発行の「秋田県温泉のしるべ」によると、開湯は「詳ならずと雖も浴場の創設は慶長年間なりしと云ふ記事縁起書類は享保9(1724)年火災に罹り今之を存せずと雖も寛文6(1666)年舊藩主(3代)佐竹義處(処)公の弟玄蕃入湯せしこと再度人馬継立(つぎたて)の制札を掲く同11(1671)年奉行多賀谷某より湯錢定めの書付を與へ今猶之を存す」と記しており、江戸初期には利用されていた古湯であることが分る。