泥湯温泉どろゆおんせん

JR奥羽本線湯沢駅から南へ約30km。高松岳(標高1,348m)の北東麓、標高630mの山あい、高松川沿いにある。温泉施設*1は2軒。温泉の発見については、不詳だが、1814(文化11)年に訪れた紀行家菅江真澄は「泥湯山(高松岳、山伏岳、小安岳)の麓になりぬ。湯のもとに、天狗岩とていといと高き岩嶺に松生ひ、紅葉したるなど、いとおもしろし。此山脚(やまもと)の舊温泉(もとゆ)とて淺く流れたり。新湯(いまゆ)は小屋多く作りて人さはに來集る温泉也」とし「湯桁は二ツならびあり」として紹介しており、江戸後期には湯治場*2として近隣では知られていたと思われる。現在は、湯治宿も減り、静かな山間の温泉となっている。温泉は硫黄泉のため、白く濁ており、「泥湯」の名の由来*3にもなっている。泉質は単純温泉、単純硫黄泉、硫酸塩泉硫黄泉、泉温は67℃。
#

みどころ

湯沢方面から沢を登り詰めてくると、左手に噴気が上がる白色をしたガレ場がみえ、周囲の山々の緑のなかで際立つ。その手前に道路を挟み温泉施設の建物が数個建ち並び、湯煙が上がる。逆に川原毛地獄から降りてくると、狭い沢ながら平たん部に入ったところに位置し、まさに山の湯の雰囲気を醸し出している。
 奥山旅館には、大露天風呂や混浴露天風呂、男女別の浴場などがあり、いろいろな温泉の楽しみ方できる。もう一軒の小椋旅館は立ち寄り湯だが、内湯は鄙びた湯治場の風情一杯の檜風呂。浴槽は小さめだが、こちらでも白濁した泥湯をたっぷり堪能できる。
#

補足情報

*1 温泉施設:宿としては2軒あるが、現在、1軒は日帰り入浴のみ。宿泊営業を行っているのは1912(明治45・大正元)年創業の「奥山旅館」のみ。2019(平成31・令和元)年にはリニューアルしており、大露天風呂(冬期は雪のため、入浴不可)もある。客室は9室。
*2 湯治場:菅江真澄は「浴舎ひしひしとならびた(並び建)ちて人とらたちこむ處(ところ)也」とし、1894(明治27)年発行の「秋田県温泉のしるべ」でも「原泉を湧出する四ヶ所にして各其質分を殊別にし浴室四ヶ所客舎(湯治宿)拾餘戸(10戸余り)旅籠二戸あり」と湯治客で賑わっていたことを記録している。
*3 名の由来:地元では「昔、乙女が病苦で湯治をしたかったため、あまりにも湯が透明で入浴をためらっている時、天狗が現れ白く濁らせて入れるようにした」という言い伝えがあり、それが名の由来だとされている。また、「秋田県温泉のしるべ」では「往古雨古ときは四山の水此の地に集りて泥沼の如くなるを以て此の地を呼で泥と名つくと云ふ」と、あるいは菅江真澄は「濁りてさながら淤泥(おでい)水の如に涌出ればしか云ふ名におへり」とロマンのない由来を書き残している。