川原毛地獄かわらげじごく

JR奥羽本線湯沢駅から南へ約30km、泥湯温泉の西2km、灰白色の荒々しい岩肌を見せ、硫化水素ガスを噴出させている標高約800mの硫黄山で、川原毛地獄*1と呼ばれている。辺りには鼻をつく強い硫黄臭が漂う。807(大同2)年に修験場*2として僧月窓によって開かれたという。この地は、川原毛硫黄山と呼ばれた鉱山でもあり、1623(元和9)年に採掘が開始され、1966(昭和41)年まで採掘がなされていた。1814(文化11)年にこの地を訪れた紀行家菅江真澄は、激しい噴気の様子や硫黄の採掘などについて記録*3に残している。川原毛地獄上部(以下、地獄駐車場)と麓の大湯滝入口に駐車場(以下、大湯滝駐車場)がある。冬期は見学不可。
 地獄駐車場から地獄巡りをするように下っていく遊歩道が付けられている。標高約860mの針山地獄近くのピークの方へも遊歩道が伸びているが、現在は有毒ガスの影響で立入禁止になっている。荒涼とした地獄を観察しながら下れば、標高700mの川原毛地蔵菩薩像前の大湯滝駐車場に達することができる。 さらに500mほど山道を下ると、標高638mのところに「川原毛大湯滝」がある。約20mの高さから上流で湧出する温泉と沢水が混じった湯水が勢いよく流れ落ちる。滝壺や渓流は天然の露天風呂*4になっている。また、地獄駐車場からは10km、大湯滝駐車場からは5kmほど下ったところには、地獄の入口ということから名付けられた三途川渓谷*5がある。
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みどころ

標高800mほどの駐車場で車から降りると、いきなり強い硫黄臭が鼻をつく。面前には草木が生えない灰色の山肌の荒涼とした風景が広がり、いたるところから蒸気が吹きだしている。まさにその名のとおり地獄さながらの光景。
 「川原毛大湯滝」へは、大湯滝駐車場から下りの山道で沢に下るため、足回りは十分準備しておいた方が良い。大自然の中でダイナミックに湯が降り注ぐ天然の滝壺風呂は爽快であることは間違いない。ただ、帰りの登りに備えて体力を温存しておきたい。
 なお、地獄駐車場から大湯滝駐車場までは、車で行くと13kmほどの遠回りになる。湯沢方面から大湯滝を主目的に訪れる場合は、大湯滝駐車場の方に向かうことをお勧めする。
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補足情報

*1 川原毛地獄:地名の由来は定かではないが、一説には、草木が一本も生えていない状況を表わすものとして土器(かわらけ)に譬えたともいわれている。
*2 修験場:僧月窓が修験場として開山した霊通山前湯寺は、その後衰退したが、1393(明徳4)年に僧栴檀によって3km下流の三途川橋を渡ったところに移され再建された。その後、1457(康正3・長禄元)年には、稲庭に本拠地にしていた小野寺道広が、この前湯寺を稲庭村に移し、山号寺号を嶺通山広澤寺と変え、小野寺氏の菩提寺にした。前湯寺境内の跡地には十王堂が建立され、現在も祠は遺る。
*3 記録:菅江真澄の「高松日記」には「八万地獄とて火井(ひのあな)二ツありて高く燃えあがる、其火の色白く風に鳴り谷にひびきわたりて、冷しく恐し」とし、さらに「賽の川原といへる處もやや過ぎて、劔の山のそびら(背:うしろ)とおぼしくて大釜といふあり。そは雷のおちくべう山もとどろ(轟)に鳴とよみ、いとおほらかに火の色しろじろと高くもえあがり雲となり、麓は霧とたちこみて山路くらく、石硫黄火音(このひのもゆる)は霹靂(雷が激しく鳴る)するにこと(異)ならず、いといと恐きところ也」と地獄絵図のような描写をしている。また、「路の弓手妻手(左手右手)に、鶴の嘴といふものして硫黄掘りぬ。」と硫黄鉱山についても触れている。
*4 天然の露天風呂:「川原毛大湯滝駐車場」からは徒歩15分ほど。「川原毛地獄駐車場」からは車では通り抜けられず、徒歩20分ほどかかる。露天風呂に流れ落ちる泉温の関係で入浴適期は7月上旬から9月中旬。入浴の際は水着の着用のこと。シーズン中は簡易脱衣所を設置。
*5 三途川渓谷:川原毛地獄の入口にある。高松川の渓流が深く岩を削り、両岸は高さ40mの岩壁がそそり立つ。もともとは3つの澤が合流するところであったので「三津川」と呼ばれていたが、まさに地獄の入口に相応しい景観ということで、「三途川」と表記するようになった。絶壁の岩肌には、しま模様の地層が見える。これは、この地がカルデラ湖であった時期の堆積物や繰り返しあった火山噴火による噴出物が重なり地層となったもので、三途川層と名付けられている。渓谷を眺望するには三途川橋の橋上からがもっともよい。