田沢湖たざわこ

秋田県の中央部岩手県寄り、東に奥羽山脈、西に出羽山地が連なる山間にある。JR秋田新幹線・田沢湖線田沢湖駅から田沢湖畔の白浜まで北へ約6km。周囲約20kmの湖岸線は、六角形に近い円形をしており、ゆるやかな山稜に囲まれ、水面標高は250mである。最水深423.4mは日本一の深さを誇る。成因としては那須火山帯中に生じた火山陥没によって生じた代表的なカルデラ湖*1であるというのが有力ではあるが、火山噴出物などに疑問点があり確証には至っていない。河川による流入はほぼないにもかかわらず一定の水量を保っているのは、湖底に湧水が多いためとみられている。
 かつて湖にはクニマス*2などのマス類・フナなどが生息していたが、電源開発と疏水整備の結果、1940(昭和15)年に玉川の酸性水が混入し、酸性水に強いウグイ以外は絶滅したといわれている。中和事業も行われ中性化が進み、回復傾向にはあるとされている。
 東岸の白浜にバス停と遊覧船発着所があり、旅館・飲食店が集中している。また、夏はこの付近では湖水浴が可能。ほかの湖岸線は人家も少なく静かであるが、西岸からは秋田駒ヶ岳が背後にそびえる景観が望まれる。また田沢湖にまつわる辰子姫伝説*3が伝えられ、南西岸には金色の「たつこ像」が湖水のなかに建つ。
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みどころ

良く晴れた日の湖水はルリ色に輝き、かつてほどではないにせよ透明度も高く、幻想的で神秘性を感じ、辰子姫伝説にもマッチする。ただ、湖水の色がルリ色に輝くのは、湖水の酸性化の原因となった玉川から温泉水の流入で、溶け込んだ「アルミニウム」の細かく沈殿しない粒子が青い光だけを反射するためにおこる現象だともいわれ、複雑な思いもする。
湖岸線は約20km、六角形に近い円形で平坦なところが多いので、白浜でレンタサイクルを借り、一周してみると良い(周遊バスもある)。東岸ではキャンプ場や春にはサクラが湖水に映る「県民の森」を抜け、南岸から西岸にかけては秋田駒ケ岳を湖水越し望み、湖中のたつこ像をみることができ、北岸に至れば、辰子姫が飲んだといわれる泉「潟頭の霊泉」がある御座石神社などに立ち寄るとよい。
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補足情報

*1 カルデラ湖:ラテン語の「caldaria」が由来。スペイン語やポルトガル語では「鍋」を意味する。火山の噴火に際し、マグマの急激な噴出でマグマ溜まりの天井が崩壊することにより、火口部の地表にできる直径2km以上の窪地のことを指す。この窪地に水が溜ってできたのがカルデラ湖。
*2 クニマス:かつて世界中で田沢湖だけに生息していた田沢湖の固有種だったが、玉川の酸性水の混入により絶滅した。かつて田沢湖から移殖した山梨県西湖でも未確認とされていたが、2010(平成22)年に西湖で個体が発見された。南岸には西湖から移したクニマスを飼育展示するとともに田沢湖の歴史文化について展示解説する田沢湖クニマス未来館がある。
*3 辰子姫伝説:むかし、神代村(田沢湖町院内)に辰子という美しい娘が母と2人で住んでいた。辰子は自分の美しさを永久に変えたくないと思い、観音様に願をかけた。満願の夜にお告げがあり、辰子はお告げのとおりにひそかに山を越え、谷間に湧水があるのを見つけて飲んだ。いくら飲んでもかわきがやまず、とうとうその姿は大蛇(竜)になり、泉は大湖水になった。これが田沢湖で、辰子は湖の主になった。やがて辰子は八郎潟の主八郎太郎と恋仲になり、冬は八郎が田沢湖に訪れるという。田沢湖が冬でも凍らないのはそのためといわれている。
関連リンク 仙北市(WEBサイト)
参考文献 仙北市(WEBサイト)
仙北市(WEBサイト)
『土地分類基本調査 田沢湖』秋田県
『秋田県・田沢湖における水質と循環の歴史的変遷』日本地球惑星科学連合2018年大会
『秋田県の歴史散歩』秋田県の歴史散歩編集委員会(編) 山川出版社

2023年06月現在

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