仙台城跡 せんだいじょうあと 

仙台駅から青葉通りを西へ進み、広瀬川に架かる大橋を渡ると仙台城跡に至る。観光地である本丸跡の標高は115m、本丸跡の最高所(天守台)は標高143mである。仙台市街を一望に見下ろし、遠く太平洋も望める景勝地の青葉山丘陵に城跡を残す。本丸の南は深さ80mを超える竜の口(たつのくち)渓谷、東は断崖絶壁で崖下を広瀬川が流れ、本丸跡との比高差は約80mである。西は深い山林と尾根筋の堀切で、人馬の通行も困難な天然要塞の地である。築城当時、仙台城は全国でも屈指の規模を誇る山城であった。
 伊達政宗は、「東北の関ヶ原」ともいわれる上杉景勝との戦いを前提に仙台城の縄張りを開始した。国分氏*の千代(せんだい)城を修築し、1603(慶長8)年ころほぼ完成し、岩出山より居を移した。1610(慶長15)年には、本丸御殿の中心的建造物である大広間が完成した。仙台城はそれ以降270余年にわたり、仙台藩六十二万石を領した伊達家13代の居城として威容を誇った。
 本丸は5ヵ所に櫓を構え、天守は設けず、壮麗な大広間を含む御殿が立ち並ぶ仙台藩の権威を象徴する場所であった。本丸東側の崖上に築かれた懸造も他に類を見ない施設である。大手門は本瓦葺きの櫓門に五七桐紋・菊花紋などを用いた雄大豪華な造りで、戦前には国宝に指定されていたが、戦災で焼失した。大手門の建築については、秀吉から拝領した名護屋城のものを移築したという説など諸説あり、現在では慶長年間(1596~1615年)、または2代藩主忠宗の二の丸造営に伴う1638~1639(寛永15~16)年頃の建築と考えられている。
 1967(昭和42)年に復元された大手門脇櫓や石垣・土塁・堀などに往時の威容をとどめており、2003(平成15)年には国指定史跡に指定された。仙台城の一部は青葉山公園となり、観光地であるとともに市民の憩いの場となっている。本丸跡には護国神社、土井晩翠(ばんすい)*の荒城の月詩碑、島崎藤村詩碑、青銅の鵄がはばたく昭忠碑、そして仙台城下を見守る伊達政宗公騎馬像*が立つ。
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みどころ

仙台城本来の規模は、歩くか自転車を利用しないとわからない。車を利用した時も徐行しながらみてほしい。現在、市博物館のある東丸(三の丸)北側の坂を大手門跡まで上りその先が二の丸で、左折すると中門跡で、さらに急坂をのぼりきると本丸の石垣が見えて、ようやく本丸跡に達する。そこでは仙台市街地を一望できるが、眼下の広瀬川との高さに注目したい。この断崖が東を守る。本丸の石垣で一番高いところは約17mにも達する。西公園から城跡を通る道路には家臣の屋敷跡があり、八木山橋から断崖絶壁の続く竜ノ口峡谷、ここが南の守りになる。本丸の石垣は、1997(平成9)年からの解体修理にともなう調査によって、3時期の変遷が確認された。現在みられる切石積みの石垣は、1668(寛文8)年以降の第3期のもの。築城期と1616(元和2)年以降に築城した政宗時代の石垣は、野面積みであり、地震で崩れ再建するたびに、拡張・整備していったことが明らかとなっている。現在、本丸跡に、仙台城見聞館と青葉城資料展示館があり、ここで築城や城下町、城内の遺構、発掘品、仙台城復元映像などがわかりやすく紹介されている。
 1978(昭和53)年に大ヒットした「青葉城恋歌」により、仙台城(青葉城)・杜の都は、さらに全国に知れ渡ることになった。作詞は仙台市の星間船一、この詩に感動したさとう宗幸が作曲し、彼の静かなやさしい声で歌われヒット曲となった。今では仙台駅の発着メロディーにも使われ、県歌・市歌のような位置付けになっている。
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補足情報

*国分氏:南北朝時代から戦国時代末まで、陸奥国分寺付近から宮城郡南部に勢力を張った一族。
*大広間:本丸に築かれた大広間の発掘調査は2001~2009(平成13~21)年までに及んだ。高さ約17m、畳敷き部分だけでも約260畳にも及ぶ大きな建物で、発掘調査で確認された礎石跡の位置に新たな礎石を配置し、当時の建物規模や部屋割りを表現している。
*土井晩翠:1871~1952年・詩人・英文学者。仙台市に生まれ、第二高等学校の教授となる。『荒城の月』を作詩し、『天地有情』『暁鐘』『曙光』などの詩集がある。仙台市青葉通りには晩年、彼の住んだ晩翠草堂があり、堂の前には「天地有情」と刻んだ石碑が立つ。『荒城の月』の詩は土井晩翠が28歳のときの作詩で、碑の側に晩翠像が立つ。
*島崎藤村詩碑:明治中期、仙台東北学院教師時に構想を練ったという『若菜集』の一節が刻まれている。
*伊達政宗の騎馬像:1935年に彫刻家小室達氏が製作、戦争中供出したが、1964年再建。
関連リンク 仙台市(WEBサイト)
参考文献 仙台市(WEBサイト)
宮城県(WEBサイト)
宮城まるごと*探訪(公益社団法人 宮城県観光連盟)(WEBサイト)
旅東北(⼀般社団法⼈東北観光推進機構)(WEBサイト)
『宮城県の歴史散歩』宮城県高等学校社会科(地理歴史科・公民科)教育研究会歴史部会=編 山川出版社

2023年08月現在

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