鳴子温泉なるこおんせん

東北新幹線古川駅で陸羽東線に乗り換え、約45分の鳴子温泉郷の中心である鳴子温泉は、荒雄川の川岸に鳴子温泉駅を中心に半円を描くように広がっている。駅前に温泉街が開け、近代的な旅館や古風な旅館、みやげ物店、こけし工人の店が立ち並んでいる。
 鳴子温泉は、837(承和4)年、鳴子火山の爆発によって生まれた。寿永・文治年間(1182~1189年)の頃に開湯したのは鬼首温泉*である。その後、東鳴子*、中山平*、鳴子、川渡(かわたび)*も開湯し、13世紀の順徳天皇の『八雲抄』には、名取(秋保温泉)・飯坂と並び称された。1600年代には、鳴子温泉郷が形成された。宝暦・明和年間(1751-1771年)の頃には、温泉の種類が多い”十五湯”という意味から玉造十五湯の名が起こった。江戸時代に、東鳴子の湯は山形県赤湯御殿湯とともに仙台藩の御用湯となり、林子平や十三代仙台藩主伊達慶邦夫人らが訪れ、温泉は最盛期を迎えた。1827(文政10)年の『諸国温泉効能鑑』では、鳴子は東前頭5枚目、川渡の湯は東前頭24枚目に番付されている。明治以降も、鳴子温泉郷の各温泉地は、特色を持った独自の発展を遂げていくのである。
 温泉街の高台にある温泉神社(ゆのかみやしろ)は、近くの川渡温泉の温泉石(ゆのいし)神社とともに鳴子温泉の誕生の同年に創建と伝わる、歴史ある神社である。
 鳴子温泉の泉質は、硫黄泉・含芒硝硫化水素泉・酸性明ばん泉・含硫化水素酸性泉・芒硝性苦味泉・弱食塩泉・重曹泉(旧泉質名)と多種で、泉温も30度の低温から100度の高温までにわたる。
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みどころ

街中を歩くと、歩道上の大きなコケシがにこやかに迎えてくれる。コケシを販売する店とコケシを作っている工人の店が目に留まる、コケシにあふれた温泉地である。共同浴場として親しまれている「滝の湯」は温泉神社の御神湯として、千年の歴史をもつ古湯である。それに対し、「鳴子・早稲田桟敷湯」は、1948(昭和23)年に早稲田大学の学生が実習で掘り当てたことから「早稲田湯」と名づけられた共同浴場で、1998(平成10)年に全面改装され、鳴子・早稲田桟敷湯となった。
 温泉郷は約400の源泉を有し、日本にある11種類の泉質のうち8種類(旧泉質名の場合)がここにある。それぞれ特色ある温泉なので、ぜひすべてのお湯に浸かってほしい。
 鳴子温泉駅の裏山にある潟沼にも、ぜひ足を延ばしてほしい。潟沼は周囲わずか1.3kmのカルデラ湖であるが、日本有数の強酸性湖であり静寂な湖である。紅葉も美しい。
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補足情報

*鬼首温泉:眼病に効果が高いと伝えられる轟温泉、宮沢温泉、混浴露天風呂の前に3mの湯滝が流れ落ち、川底からも温泉が湧き出ている吹上温泉で構成される。
*東鳴子温泉:湯治場としての歴史は古く、670余年。湯量も豊富。現在でも湯治ができる。
*中山平温泉:アルカリ度の高い、ぬるぬるした感触の源泉で、うなぎ湯とも呼ばれ親しまれている。
*川渡温泉:古くから「かっけ川渡、かさ鳴子」といわれてきた名湯。開湯1千年と伝わる。
関連リンク 鳴子温泉(WEBサイト)
参考文献 鳴子温泉(WEBサイト)
宮城県鳴子温泉旅館組合(WEBサイト)
『全国温泉大事典』野口 冬人 著 旅行読売出版社
中山平温泉(中山平温泉観光協会)(WEBサイト)

2025年07月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。

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