日高火防祭ひたかひぶせまつり

JR東北本線水沢駅から徒歩約10分、岩手県奥州市水沢の市街地で実施される火防祈願の祭。本祭は、4月最終土曜日、前夜祭は本祭の前日に行われる。(令和5年度は本祭のみ実施)
 少年時代、江戸にいた伊達宗景は、1657(明暦3)年の大火をはじめとした火事の多さ、恐ろしさに驚き、帰水後、火防の対策に万全の策を講じた。人智の不測不慮の罹災を神仏の加護によって未然に防止しようとし、古来より日高妙見の名で親しまれてきた日高神社の日は「火」に、瑞山(みずやま)神社*の瑞は「水」に通ずるとして、両社に祈願し始められたのがこの祭であると伝わる。
 また、村景公の時代に1735(享保20)年、水沢の大火の後、佐々木佐五平が江戸に派遣され町火消組の機構や操作ぶりを学び、江戸のいろは組にならって6町に1つずつ組をおき、水沢の町火消組を創設したといわれている。江戸のいろは組にならった6町それぞれの町から、町印を先頭に打ちばやし、はやし屋台が日高神社に火防祈願する。打ちばやしの後にそれぞれ独特の音律を持つはやし屋台が続く。はやし屋台は金、朱、碧色の彫り物、ぼんぼりや造花で飾られ、囃子方が登場し、三味線、太鼓、横笛が独特の囃子を奏でながら街にくりだしていく。現在は9町組のはやし屋台が街を練り歩く。
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みどころ

本祭の夜、ぼんぼりの灯りの中、各町組の屋台が揃って華麗なお囃子を披露する「揃い打ち」、その後の「相打ち」が始まりが祭のクライマックスを迎える。祭の盛り上がりが最高潮になり、各町組の屋台が競って華麗なお囃子を披露する。流麗な音曲と夜に映える屋台で幻想的な時間が流れる。
 昔は祭の本体だった「打ちばやし」も抑えておきたい。素朴な屋台だが、「トットコメェ」と呼ばれる笛の音律は、西洋音楽の楽曲形式のひとつで、通例二つの主題を対比的に用い、主題の提示・展開・再現の3部から構成されるソナタ形式に似ているといわれいる。
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補足情報

*日高神社:日高神社は810(弘仁元)年に創建と伝えられる東北地方の古社で、北斗星の本地、妙見菩薩を祀る宮として信仰を集め、古来「日高妙見」の名で親しまれてきた。現在の本殿は、1632(寛永9)年に伊達氏の家臣で水沢館主であった留守宗利によって建立されたと伝えている。本殿は国指定・重要文化財で、三間社流造り、向拝頭貫などに特色ある形式がみられる。造りも優秀で、岩手県下では江戸時代前期まで遡ることのできる数少ない神社本殿として貴重である。
*瑞山神社:留守氏代々の祖霊社。1629(寛永6)年に水沢を所領する事になり、現在の日高神社境内に遷座。社号である「瑞山」は初代である伊沢家景を瑞山公と称していた事から名付けられたと言われている。