黒崎くろさき

岩手県沿岸北部、北山崎の北方5kmにある岬で、弁天崎まで連なる断崖の北端にあたり、150~200mの高さから黒っぽい絶壁が海に落ち込んでいる。隆起した海岸が荒波に削りとられて、ほぼ垂直に切り立った崖が形作られた隆起海岸である。夏に吹くやませ*による濃霧や航路を妨げる冬の荒海のなかの指標となっている。
 赤松の自然林におおわれた岬には先端に白い灯台と北緯40度のシンボル塔が立ち、国民宿舎をはじめ外洋20数kmの眺望が楽しめる展望台・キャンプ場・駐車場がある。明戸海岸まで続く自然遊歩道の北の入口で、陸中海岸北部の探勝拠点となっている。ここから見る日の出は息を呑む美しさ。
 黒崎から少し南側に回ったアンモ浦展望台からは、断崖から海に直接流れ落ちる「アンモ浦の滝」を眺めることができ、その落差は150mで岩手県最大。
 古くから海上交通の要所でもあり、江戸時代初期から海防を重視した南部藩では、藩領だった釜石市から青森県野辺地までの沿岸随所に遠見船番所を設け外国船を警戒し、1856(安政3)年黒崎にも砲台が作られた歴史を伝えるモニュメントとして黒崎砲台場がある。
 陸中黒埼灯台は太平洋に突き出した黒崎にある高さ130mの断崖上に立つ、高さ12mのコンクリート造の灯台。光の届く距離は東北一の約19.5海里(36km)に達する。
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みどころ

ほぼ垂直に太平洋に落ちる断崖は高さ200mにもおよびその迫力がある。駐車場から展望台まで近いため、子どもや高齢者でも比較的容易に雄大な景色を楽しむ事ができる。陸中黒埼灯台は、岸壁上に立つ姿は美しく地元でも“白亜の灯台”として親しまれ、2019年には「恋する灯台」に認定された。隣接する「幸せを呼ぶカリヨンの鐘」とともに夫婦やカップルのデートコースとしてもオススメだ。
 周辺は「みちのく潮風トレイル」のルートの一部になっており、黒崎漁港からネダリ浜までの「ネダリ浜自然歩道」が歩ける。特筆なのはゴツゴツとした岩場の波打ち際を約1km歩けること。自然の強さをダイレクトに感じられ、冒険心を掻き立てられる。アドベンチャー志向の旅人におすすめしたい。
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補足情報

*三陸海岸は、太平洋に面する延長約708kmの海岸線は変化に富み、宮古市から南は極めて入り江の多いリアス式海岸であり、北は隆起海岸で海食崖や海岸段丘が発達していて、対照的な景観を見せている。
*やませ:北海道や東北地方、関東地方で梅雨や夏に吹く冷たい北東寄りの風。冷たく湿ったオホーツク海気団からの北東気流で、もともと冷湿なうえ、霧を伴うために日照量が不足し、農作物への被害が大きくなることがある。