酸ケ湯温泉すかゆおんせん

八甲田大岳の中腹、標高約900mの位置にある古くからの湯治場で、国民保養温泉*の第1号に指定されている。江戸時代 1684(貞享1)年に開かれたとされている。酸性の強い硫黄泉のため酢ヶ湯と呼ばれていたと考えられる*。高温自然湧出の源泉を求める湯治客と、十和田奥入瀬の途中に立ち寄る観光客でにぎわう。
最近は豪雪地域の代名詞としてニュースなどで映し出され知名度が高くなっている。
 泉質は酸性硫化水素泉、石膏泉、50~60度、PH1.4~2.0の強酸性で石けんは泡立たない。湯治は3日でひとまわり、10日を1湯治期といい、うたせ*やまんじゅうふかし*、千人風呂など独特の湯治風景がくりひろげられる。そのひなびた味わいが注目されて、広く紹介されるようになった。近くに地獄沼、東北大学付属植物園*があり、観光客・湯治客の散策の場になっている。
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みどころ

山の一軒宿酸ヶ湯は昔ながらの清純、素朴な風情を残している。一軒宿ではあるが規模は大きく、宿泊施設は湯治棟、旅館棟に分かれており、大浴場から自炊客用の食料品・日用品の売店まで設備がそろっており、わが国の湯治の歴史の生き証人ともいえる。名物の大浴場のヒバ千人風呂には源泉の異なる二つの湯船「熱の湯(ねつのゆ)」と「四分六分の湯」、打たせ湯の「湯瀧」、かぶり湯の2か所の「冷えの湯」がありいずれも源泉かけ流し温泉である。脱衣場は男女別ではあるが、浴室内は混浴という東北に多い湯治場の慣習を残している。浴室内は160畳もの広さと柱一つないヒバ造りの空間に圧倒される。この浴室にある熱の湯は浴槽の底から源泉が湧き、名前に反して温めであり、ぬるめゆえに長い時間湯につかることで体の芯まで温まることから名付けられている。
 標高約900mの清涼な高地にあり夏場は涼しさと豊かな自然に囲まれ快適である。冬場は日本でも有数の多雪地域で雪に埋もれた姿に圧倒される。ブナ帯、アオモリトドマツ帯の境界付近にあり高山植物の種類も多く、八甲田山の魅力的な縦走の起終点にもなっているため登山客にも喜ばれている。屋根裏に営巣し人々の間近に群飛するイワツバメにも酸ヶ湯の自然の豊かさが感じられる。
 わが国を代表する青森県の版画家棟方志功も酸ヶ湯を愛し、この地の作品を残しており酸ヶ湯館内にも展示されている。
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補足情報

*国民保養温泉:温泉利用の効果が十分期待され、かつ、健全な保養地として活用される温泉地を「温泉法」に基づき、環境大臣が指定するもの。酸ヶ湯は1954(昭和29)年に日光湯元・四万(しま)とともに第一号として指定された。
*酸ヶ湯の語源:鹿が傷を癒しているのを猟師が発見し、初めは「鹿ノ湯」と呼ばれたという説もある。
*うたせ:落下する湯に体を打たせる湯治法。
*まんじゅうふかし:酸ヶ湯の宿から100mほど沢を下ったところに、簡単な小屋掛けをしてある。温泉蒸気が通る樋状の木箱があり、この上にまたがって尻から温める。「まんじゅう」とは、津軽弁で女性の象徴を表す言葉。つまり、女性が下半身を温めることで温浴効果が期待でき冷え症などの婦人病や神経痛に効能があるといわれる。
*東北大学付属植物園:東北大学理学部付属八甲田植物研究所という。酸ケ湯温泉に近い地嶽沼の向かいにあり、北日本を主体とした高山植物約300種を集めてある。
関連リンク 酸ヶ湯(WEBサイト)
参考文献 酸ヶ湯(WEBサイト)
八甲田山九湯会(WEBサイト)
『青森県の地名』平凡社
『新版 日本温泉地域資産』日本温泉地域学会編

2023年08月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。

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