日高の競走馬牧場群ひだかのきょうそうばぼくじょうぐん

日高地方はサラブレッド(競走馬)の生産地として名高く「優駿*のふるさと」とも呼ばれている。この地方には競走馬の牧場が約1,100戸、約20,000頭の馬がおり、日本の競走馬の8割を占めるというデータもある。北海道のなかでは気候が温暖であり、雪も少ないため昔から馬が育てられてきたということが大きな理由の一つである。
 歴史を振り返ると、江戸時代に幕府が現在の浦河町に駅馬(手紙や荷物の搬送に使う馬)を飼育するための馬牧(牧場)を設置したのが始まりだといわれている。明治に入ると馬牧は廃止されるが、1872(明治5)年には新冠と静内にまたがる土地に「新冠(御料)牧場」が開設され、この牧場にサラブレッドが輸入された。さらに1907(明治40)年に浦河町に「日高種馬牧場」が設置され軽種馬(運動能力に優れ競馬や乗馬に用いられる)の生産がはじまり、ここでは主に軍馬(軍隊で使う馬)の乗用馬を生産した。その後、軍馬の需要はなくなるが、1954(昭和29)年の日本中央競馬会の設立がきっかけとなり競走馬の生産地として牧場経営が普及していく。牧場に加え、育成施設やセリ市場など、馬に関わる施設が多く集まっている。事前連絡により見学が可能な牧場もある。
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みどころ

このような軽種馬牧場は観光牧場ではないことに十分留意し、「競走馬のふるさと案内所」による「牧場見学のルール&マナー」などを熟読、遵守すること。
 浦河町の海岸沿いから北東方向(帯広市)に向かう国道236号(通称:天馬街道)線沿い、途中で分岐してJRA日高育成牧場*、うらかわ優駿牧場AERUに向かう道、優駿さくらロードなどの両脇に、競走馬を育てるためのいくつもの牧場が連なっている。小高い山々の谷間に広がる牧場群で悠然と草を食む優美な姿をしたウマを車窓から眺めて車を進めることになるが、他では見られない当地ならではの郷土景観に引き込まれる。また、新冠町にはサラブレッド銀座とよぶ牧場群があり、判官館(はんがんだて)森林公園内の展望台から一望することができる。    
 牧場見学などを希望する場合は、「競走馬のふるさと日高案内所」などに問い合わせるとよい。引退名馬などを見学することもでき、これを目当てに訪れる人も多い。
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補足情報

*優駿:特にすぐれた競走馬のこと。宮本輝が描いた小説の名称。1982~86(昭和57~61)年にかけて、「小説新潮スペシャル」「新潮」誌に断続的に連載。単行本は1986(昭和61)年、上下2巻で刊行。第21回吉川英治文学賞を当時の史上最年少(40歳)で受賞したほか、JRA賞馬事文化賞を受賞。杉田成道監督により映画化。
*日本中央競馬会(JRA)日高育成牧場:国営競馬時代の1952(昭和27)年から育成業務が始まり、1965(昭和40)年に日本中央競馬会日高育成牧場として正式に開場。1993(平成5)年には従来の育成業務施設に加え、生産・育成研究関連施設および軽種馬育成調教馬を備えた現在の日高育成牧場となった。