知床五湖しれとこごこ

知床山系の山裾に広がる原生林の中に点在する大小5つの火山性堰止湖。それぞれ一湖、二湖と番号で呼ばれ、一番大きいのが二湖、小さいのが五湖である。流入、流出する川はなく、五湖の水は湖底の岩を伝い、知床半島の断崖(五湖の断崖)にしみ出している。五湖全てを周る大ループと呼ばれる地上遊歩道は1周3kmで、コースタイムは約1時間30分。遊歩道の入口に近い一湖と二湖を周る小ループは1週1.6kmで、約40分を要する。また、ヒグマ対策として地上遊歩道の入口からこれとは別に全長800m、電気柵を設けた高架木道が設置されており、最遠の一湖傍の湖畔展望台までの往復所要時間は約40分である。
 知床五湖ではかねてから散策時の踏圧による植生浸食や、ヒグマからの危険回避に伴う散策路閉鎖といった不安定な運用などの課題があったため、その対策として自然公園法における利用調整地区制度*を柱とした利用のルールが定められ、地上歩道の散策にはガイドツアーへの参加が必須となる時期などが設定されている。散策路はイチイ、トドマツの針葉樹林、ツタウルシ・ミズナラ・ナナカマドなどがうっそうと茂る原生林の中を通り、各湖に眺望地が設けられている。湖沼の周囲の湿地には水芭蕉、湖中にはネムロコウホネ・ミツガシワなどの花が咲く。また、セキレイ・シジュウカラ・ウグイスなど小鳥の宝庫であり、キツネなどの小動物も生息する。
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みどころ

地上遊歩道を小ループに沿って歩き、一湖の湖畔展望台から高架木道に上がり、そこを通って出発地に戻るというルートを通るのが、短時間でありながら知床五湖の雰囲気を十分に楽しめる歩き方である。二湖の展望地からの眺望は、湖と湖畔の原生林、さらに奥に連なる知床の山々を望むことができる絵葉書などにも紹介される知床らしい景観である。また、高架木道の展望所から眺める景観は、少し高い視点から一湖とその周りの原生林を見渡すことができ、背景の山々を含めた全体の雰囲気は素晴らしい。
 利用調整地区制度によりヒグマ活動期に五湖全てを見て回るためには、知床五湖登録引率者に登録された自然ガイドによる有料のガイドツアーへの参加が必須となっている。ガイドツアーでは、散策路入り口にある知床五胡フィールドハウスで約10分間のレクチャーを受けたのち、大ループに沿って五湖を巡る。専門の自然ガイドの解説によって、自分だけでは気づかなかったような自然の魅力や面白さに触れることができるだろう。また、参加人数は少数に限定されており、ツアーは約20分おきに出発するので、他の観光客と重なることはなく、静けさの中で知床の自然を存分に楽しむことができる。所要時間は約3時間である。
 なお、高架木道は、予約不要で開園期間を通して手続きなしで無料で利用できる。
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補足情報

*利用調整地区制度:国立公園の原生的な風景が保たれている地区において、将来にわたる持続的な利用を実現するため、利用人数の調整等を行うことによって、自然景観や生物の多様性の維持を推進することを目的とした自然公園法における制度。環境大臣が定める期間に利用調整地区に立ち入るには、環境大臣(または環境大臣が指定した機関)に申請し、その認定を受けることが必要となる。これまでに知床国立公園知床五湖地区と吉野熊野国立公園西大台地区の2箇所で設定・運用されている。