奥出雲町は県南東部にあり、東は鳥取県日南町、南は広島県庄原市、西から北は雲南市、北は安来市に接する。
 JR木次線、国道314号、432号が通じる。
 中国山地の連なる中山間地域にあり、中央を流れる一級河川斐伊川とその支流の流域に農地が開け、市街地や集落が散在している。標高は平坦部で概ね 200m ~ 400m、県境部の高所では1,200mを超え、約1,000mの標高差がある。総面積の8割が山林で、耕地率は1割に満たない。
 2005年(平成17)横田、仁多の2町が合併して奥出雲町となる。スサノオノミコトが降臨したと伝えられる出雲神話発祥の地で、神話(スサノヲ、ヤマタノオロチ、クシイナダヒメ等)の世界に登場するなど、多くの神話の舞台として知られる。また、山陰と山陽を結ぶルート上に位置していることから中世には数多くの山城が築かれ、幾多の攻防の舞台となった。古くから砂鉄採取がおこなわれ、出雲風土記には鉄の産出地として記されているほか、明治の初めまで、わが国有数のたたら製鉄の産地として栄えた。たたら製鉄は明治以降衰退したが、幕末頃から地場産業として「雲州そろばん」が定着した。 近年、戦後久しく途絶えていた「たたら製鉄法」が文化面や学術的見地から復元(昭和 52 年)されるなど、この地に息づいてきた歴史や文化を活かしたまちづくりが進められている。
 現在も世界で唯一、たたら操業を行い、日本刀の原料となる「玉鋼」を生産している(「出雲國たたら風土記」として日本遺産に登録)。この他、米作が盛んで、東の「魚沼」、西の「仁多米」といわれるブランド米は献上米にもなっている。また和牛(仁多牛)飼育でも知られ、その堆肥は米づくりに利用されている。そのほか、キャベツ、ダイコンなどの野菜栽培、ブドウなどの果樹栽培も行われる。木炭・木材等の林業もある。
 神話ゆかりのパワースポットが数多く残る。また、たたら製鉄の技術が残されており、たたら角炉伝承館、可部屋集成館、奥出雲たたらと刀剣館では、たたら製鉄の歴史や技法を知ることができる。斐伊川は素戔鳴命(すさのおのみこと)の「八岐大蛇」伝説の舞台となっていて、その支流大馬木川にある国の名勝・天然記念物の鬼の舌震は県立自然公園になっている。他に斐乃上温泉、佐白温泉、亀嵩温泉の三つの温泉があり、これらを「奥出雲美肌温泉郷」と呼ぶ。伝統産業として雲州そろばんの生産があるが、そろばんの消費量が減少しているため、銘木工芸品などに生産を広げている。

観光資源一覧

鬼の舌震の写真

写真提供:奥出雲町観光協会

鬼の舌震 (島根県 奥出雲町 )

JR木次線出雲三成駅から南へ約2.5km。斐伊川の支流馬木川が、花崗岩を浸食してつくりだした約2.3kmに及ぶV字状の渓谷である。V字谷の左右には、大天狗岩、小天狗岩などの岸壁がそびえ立っており、河底には大小の甌穴(おうけつ)群がみられる。  鬼の舌震の名は、『出雲国風土記』によると、和仁(わに:サメの地方名)が阿伊村の玉日女命...