阿蘇の野焼きあそののやき

阿蘇五岳の山裾や外輪山の稜線に広がる広大な草原が今も残るのは、1,000年以上もの間、人々が自然と共生しながら、放牧、採草、野焼きなどを続けて維持してきたからである。
 毎年2月下旬から3月に行われる野焼きは野草地に火をつけて地表面を焼く作業で、野焼きにより家畜に影響を及ぼす害虫を駆除し、燃えた灰が栄養となり芽吹きを促し、牛や馬の飼料に適した草が育つ。
 野焼きは草原の森林化を防ぎ、草原を維持する上で欠かせない作業であるが、多くの人手と大変な労力を必要とする。広大な草原を一気に焼き払う作業はきわめて危険で、風向きを見て点火の判断をするなど長年の経験も必要になる。野焼きをはじめ草原を維持する作業はこれまで農家が続けてきたが、高齢化や後継者不足により野焼きの面積は減少しており、阿蘇の草原面積の減少につながっている。1999(平成11)年から活動を続けている野焼き支援ボランティアが欠かせない存在であり、新たにボランティアを増やし、その育成も急がれる。草原をサステナブルな観光で活用する取り組み*も始まっている。
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みどころ

阿蘇の草原に春を告げる野焼き。枯草の原野に火が入れられると炎が立ちのぼり、あっという間に燃え広がってゆく。パチパチと焼ける音、白と黒の煙があがり焦げた燃え草も飛び散る。その迫力ある光景を目当てに多くの見物客が訪れるが、野焼きは大変危険を伴う命がけの作業であり、見学の際は定められた禁止事項・注意事項を必ず守らなければならない。
 野焼きが終わった阿蘇の山々には、黒色の山肌に枯草色の一帯が残る。野焼きが終わってから山が緑色に変わるまで、期間限定でこの興味深い光景が見られる。
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補足情報

*草原をサステナブルな観光で活用する取り組み:ガイドラインを定め、特別な許可を得て草原に立ち入り、低環境負荷なE-MTB(電動アシストマウンテンバイク)や乗馬、パラグライダーを楽しむアクティビティを行い、その体験料の5%を草原保全料として草原の保全活動に還元する。

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