阿蘇神社あそじんじゃ

熊本県北東部の阿蘇市、九州自動車道熊本ICから車で約1時間、JR豊肥本線宮地駅から北へ徒歩約15分にある。
 927(延長5)年に成立した延喜式神名帳に記載された式内社で、明治時代には官幣大社とされた。全国に約500社ある阿蘇神社の総本社であり、肥後国一の宮として社格の高さを誇る。神武天皇の孫神で阿蘇を開拓した健磐龍命(たけいわたつのみこと)を主神として、その妃の阿蘇都比咩命(あそつひめのみこと)、その子供である速瓶玉命(はやみかたまのみこと)など家族神12神を祀る。
 創建は紀元前282(孝霊天皇9)年と伝えられ、天文年間(1532~55)以来300年ほど仮社殿の状態が続いたが、1835(天保6)年から1850(嘉永3)年にかけて熊本藩主細川氏の援助により再建された。神殿や楼門など6棟が国の重要文化財に指定されている。
 2016(平成28)年の熊本地震で拝殿や楼門が全壊するなど社殿のほぼすべてが甚大な被害を受け、約7年8か月後の2023(令和5)年12月に楼門の保存修理工事を終え、主要な社殿の復旧と再建が完了した。
 阿蘇神社や関係神社に伝わる農耕祭事は、阿蘇の農耕祭事*として国の重要無形民俗文化財に指定されている。
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みどころ

参道の中央に建つ楼門は高さ約18mで2層の屋根を持ち、肥後国一の宮の風格が漂う。熊本地震による楼門の修理工事においては、建造物の伝統的な工法を大切にしながら、耐震補強のために新しい技術を取り入れる試みもなされた。2021(令和3)年に復旧工事を終えた拝殿には、地元の檜が使われている。
 阿蘇神社は全国でも珍しい横参道で、社殿が東面し参道が南北に伸びる。参道には神の泉と呼ばれる水が湧き、不老長寿の水として多くの人に飲用されている。この地域は昔から地下水が湧き出る清泉の町として知られ、参道北側に連なる一の宮門前商店街には、水基(みずき)*と呼ばれる水飲み場がある。
 古くから農業の神として厚く尊崇され、今も伝わる阿蘇の祭りとも深く結びついている。春の田作祭(火振り神事)や夏の御田植神幸式(通称おんだ祭)には、より多くの参拝者が訪れる。
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補足情報

*阿蘇の農耕祭事:阿蘇神社をはじめ関係神社の国造神社や霜宮神社で年間を通して行われる豊作を祈る祭り。踏歌節会(とうかのせちえ)、卯の祭、田作祭、風祭り、御田植神幸式、柄漏流神事(えもりながししんじ)、田実祭が季節ごとに行われ、阿蘇の風物詩となっている。この一連の祭りは稲作儀礼の典型的な事例として学術的に高く評価され、1982(昭和57)年に国の重要無形民俗文化財に指定された。
*水基:一の宮門前商店街にある木や石造りの水飲み場。多くの人にこの地域の美味しい水を飲んで欲しいという地元の人々の思いから設置され、散策しながら湧き出る水が味わえる。
関連リンク 阿蘇神社(WEBサイト)
参考文献 阿蘇神社(WEBサイト)
阿蘇市経済部観光課(WEBサイト)
まちづくり阿蘇一の宮(WEBサイト)
阿蘇市観光協会(WEBサイト)
「熊本県の歴史散歩」山川出版社

2024年11月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。

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