第一白川橋梁だいいちしらかわきょうりょう

熊本県北東部の阿蘇郡南阿蘇村、九州自動車道熊本ICから約45分にある。JR豊肥本線と南阿蘇鉄道が乗り入れる立野駅の南東1,500mほどに位置する。
 阿蘇カルデラ内側の平地は中央火口丘により南北に二分され、北の阿蘇谷と呼ばれる地域には黒川が、南の南郷谷と呼ばれる地域には白川が流れる。二つの川は立野で合流し、外輪山唯一の切れ目である立野火口瀬から白川として熊本平野を流れ、有明海に注ぐ。第一白川橋梁は、黒川と白川の合流地点のほど近くに架けられた全長166.3mの南阿蘇鉄道の鉄道橋である。
 当時の最先端技術を用いて険しい立野渓谷に架設され、国鉄高森線(南阿蘇鉄道の前身)が開通する1年前の1927(昭和2)年に竣工した。川からレール面までの高さは約60mあり、1972(昭和47)年に宮崎県高千穂鉄道高千穂橋梁が完成するまでは、当時の日本国有鉄道で最も高い鉄道橋であった。また、日本最初の鋼製アーチ橋(バランスドアーチ橋*)である。
 2016(平成28)年4月の熊本地震により、橋を支える多くの部材に破断や変形が生じ、既存の橋をすべて撤去し新しい橋を架けることになった。旧橋は93年の役目を終え、2年がかりで橋が架け替えられ、2023(令和5)年、以前とほぼ同じ赤茶色に塗られたアーチの姿で蘇った。
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みどころ

第一白川橋梁には「橋を眺める」と「列車に乗る」の二つの楽しみ方がある。
 橋を眺めるおすすめの場所は、新阿蘇大橋展望所ヨ・ミュールと長陽大橋たもとの展望所で、車を停めてゆっくり見学できる。深い渓谷に架かる赤茶色のアーチ橋は、原生林の緑に良く映えている。列車時間を確認して訪問すると、より一層心に染み渡る光景が見られる。第一白川橋梁を渡る列車は橋の上でしばらく停車して汽笛を鳴らし、その音が原生林に響き渡っていく。
 列車に乗れば、高さ60mの橋上から見る渓谷美と沿線に広がる阿蘇の雄大な山々が楽しめる。窓のない開放的なトロッコ列車*なら、より一層大自然を身近に感じられる。
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補足情報

*バランスドアーチ橋(Balanced Arch Bridge):アーチ橋の一種。中間の2支点を中心にバランスをとっている構造。
*トロッコ列車:立野駅~高森駅を走る観光列車。3月から11月の土日祝日を中心に運行している。運行日により時間や本数が異なり、全席指定のため、事前確認が必要。