かんざらしかんざらし

「かんざらし」は、古くから島原市一帯で作られてきた伝統のスイーツである。原料となる餅米のくず米を冷たい大寒の日前後に石臼で水びきし、その沈殿物を乾燥させて米粉(白玉粉)を作っていたことから、「寒ざらし*」と呼ばれるようになったのが由来とされている。昔は、シロップに使われる砂糖・ハチミツは贅沢品であり、お客様をもてなすものとして出されていたとのこと。
 最近では、文化庁の令和3年度食文化機運醸成事業(地域で受け継がれ愛されている食文化を掘り起こし学びや体験の提供に取り組む)で、江戸時代から続く郷土の料理として100年フードに選出され注目されている。
 かつて島原市一帯の庶民は年貢として納める米を口にできず、くず米を主食にしていた。彼らは、それを磨り潰して長期保存できる米粉にし、そのつど調理し食していた。しかし、夏は米粉も腐りやすくそのため、団子にして湧水のなかで保存し、それを食す習慣をはじめた。一帯には1792年(寛政4年)の島原大変による地殻変動の影響で数十箇所から澄んだ地下水が湧きでるようになっており、それを活用した生活の知恵だった。そのうえで、島原一帯には砂糖の生産が盛んという環境があった。いつしか庶民らは米粉(白玉粉)の団子と砂糖で作った蜜で冷たい菓子をこしらえだし、夏の来客に振る舞うようになった。それが「かんざらし」の発祥といわれている。
 かんざらしを題材にして、NHK BSプレミアムで2019年2月6日に放送された 「かんざらしに恋して」のテレビドラマがある。
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みどころ

見た目の美しさ、かわいらしさが魅力。水の町雲仙にふさわしい食べ物で歴史的に重みがある。白玉粉で作った小さな団子を「島原の湧水」で冷やし、蜂蜜、砂糖等で作った特製の蜜をかけたもので、口の中でとろけそうな上品な甘さと喉越しのよさが人気の島原のスイーツとなっている。
 現在、「かんざらし」は、市内の多くの飲食店*で常時提供される身近な一品となっている。
「かんざらし」の名店として知られた『銀水』(1915年創業)は、二代目の逝去により1997年に閉店を余儀なくされた。以降、店舗は20年近く空き家のまま残され、朽ちるのを待つばかりとなった。だが、島原市が名店をよみがえらせる事業を進めたことで、2016年に『浜野川湧水観光交流館「銀水」』として復活、秘伝の「かんざらし」も食べられるようになった。現在、ここは観光客の人気スポットとなっている。
 かんざらしの美味しさの秘訣は、湧き水にあると言われており、白玉粉で作られたお団子は、島原の湧き水で冷やされているためである。
雲仙岳東端の眉山は、島原の町の背後に屏風のように立っており、江戸時代に発生した斜面崩壊後の恵みとして、豊富な湧水が生まれたという。この美味しい湧き水で冷やされたかんざらしは美味しいと評判で、観光客からも人気がある。
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補足情報

*寒ざらし:寒中、穀類やじゃがいも、ショウガといった食品を水(寒水)に浸したのち、陰干しすることを「寒ざらし」という。白玉粉は、米粉を寒ざらしすることによって作ることができる。
*飲食店:「島原まち歩きマップ(2023年4月)」によると、かんざらし提供店は市内に17軒となっている。

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