具雑煮ぐぞうに

正月の雑煮は各地でいろいろと違うが、島原地方の雑煮は具だくさんで、山の幸、海の幸がいっぱい盛り込まれていて、豊かな島原の産物を集大成化したようなものとなっている。島原の乱の時、一揆軍で考案*されたと伝えられており、これをもとに初代糀屋善衛エ門が生み出したのが具雑煮の始まりと伝えられ、2代目より屋号を姫松屋に改め現在に至っている。山菜やアナゴ・かまぼこなど山海の豊富な材料を入れ塩味で煮こんだ雑煮で、市内の飲食屋や雲仙の旅館*で夕食に出される。
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みどころ

材料は鶏肉、アナゴ、シロナ、レンコン、ゴボウ、凍り豆腐、椎茸、卵焼き、丸もち、春菊など十数種で野菜たっぷりで見た目の美しさと、出汁が抜群との県民の評価が高い。また、寒い時期に食べる具雑煮は、体があたたまっておいしいとの評価*もある。
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補足情報

*一揆軍で考案:島原の乱では、幕府方の攻勢で原城内に封じ込められた一揆軍が“兵糧攻めに遭って悲劇の最期をとげるわけだが、その際に四郎の命によって急遽作られたのが「具雑煮」という説。
具雑煮は寛永14年(1637年)の島原の乱の時、一揆軍の総大将であった天草四郎が、約3万7千人の信徒たちと籠城した際、農民たちに餅を兵糧として蓄えさせ、 山や海からいろいろな材料を集めて雑煮を炊き、栄養をとりながら約3ヶ月も戦ったと言われている。
*市内や雲仙の旅館:2024年現在島原市には11軒の店舗で提供(島原市ホームページによる)。
*評価:2007(平成19)年には、農林水産省の「農山漁村の郷土料理百選」に長崎県では卓袱(しっぽく)料理と並び選定されている。