小豆島のオリーブしょうどしまのおりーぶ

三都半島の東、内海湾に面した小豆島町西村地区は日本で最初にオリーブ*が栽培された場所である。1908(明治41)年 、当時の農商務省の委託により三重・香川・鹿児島の3県で試験栽培を開始したところ、小豆島のオリーブだけが結実した。現在、栽培試験地一帯は「小豆島オリーブ公園」になっており、約2,000本のオリーブの木や約120種類のハーブが栽培されている。公園はギリシャのイメージで整備され、オリーブ記念館、ギリシャ風車、サン・オリーブ温泉、宿泊施設「オリベックスうちのみ」などがあり、「道の駅」になっている。毎年10月から11月にはオリーブ収穫祭が行われる。
 オリーブ公園西隣の「小豆島オリーブ園」は1919(大正8)年に開園した、民間初のオリーブ園である。1973(昭和48)年には観光農園として一般に開放し、園内を自由に散策できるようになった。1917(大正6)年に初めて香川県農業試験場から配布されたオリーブの木があり、樹齢100年を超えてなお、たくさんの実をつけている。苗木の育成からオリーブ製品の製造販売まで一貫して行っており、レストラン、体験施設、ショップ、遊具のある広場がある。
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みどころ

オリーブ畑の丘から内海湾を望む景色は、いつ見ても美しい。オリーブの葉は裏が白っぽく、風にそよぐと銀色がかって見える。オリーブ公園は映画「魔女の宅急便」(実写版)のロケ地になったことから、無料貸し出しのほうきに跨った写真を撮ろうとする人たちでいつも賑わっている。
 香川県の県花・県木はともにオリーブ。小豆島は100年に渡り、国内でほぼ唯一の産地*であったので、他県と重複することがなく、県のシンボルにぴったりだった。しかし、日本でオリーブが一般的になり、注目され始めたのは1990(平成2)年代に入ってから。小豆島でも2003(平成15)年に「小豆島・内海町オリーブ振興特区」が構造改革特区第一号に認定されたことで、企業のオリーブ栽培への参入が始まり、歴史ある国産オリーブの産地としてのPRが盛んになった。とくにこの数年で、地元産のオリーブ製品を提供する飲食、物販サービスが増え、小豆島の旅の楽しみが広がった。また、オリーブを飼料に使ったオリーブ牛やオリーブハマチは、さっぱりとした味わいで評判がよい。
 産地ならではのオリーブの食べ方に「新漬け」がある。9月末から10月末にかけて、熟しきる直前の果実を苛性ソーダで渋抜きし、うすい食塩水に漬け込んだもので、輝くような緑色に仕上げるためには、新鮮で傷のない果実を使うことが必要である。そのため、新漬け用のオリーブは一粒ずつ手で摘み取っている。フレッシュな香りと歯ごたえを楽しめ、ほどよい油分があっておいしい。オリーブの花が楽しめるのは5月下旬から6月上旬、新漬けの販売は10月上旬から、その年収穫した果実を絞ったオイルの販売は10月中旬頃から。(勝田 真由美)
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補足情報

*オリーブ:モクセイ科の常緑小喬木。地中海地方が原産地。紀元前3000年ごろにはすでに栽培された記録がある。花は黄白色。実からはオリーブ油をとる。オリーブの木は平和の象徴。
*国内のオリーブ産地:農林水産省の特産果樹生産動態等調査によると、2008(平成20)年の栽培地は香川県と岡山県の2県であったが、2019(令和元)年調査では16県に拡大。近年、広島県江田島市、熊本県天草市などが力を入れている。