豊稔池堰堤ほうねんいけえんてい

豊稔池は観音寺市大野原町南部の五郷地区、阿讃山脈を分け入る柞田川(くにたがわ)上流にある農業用のため池である。堰堤は長さ145.5m、高さ30.4m、両端部は重力式、中央部は5個のアーチと6個の扶壁(バットレス)からなるマルチプルアーチ式ダムである。建造当時の米国の最新技術を導入しており、現存する同形式のダムの希少性から農業土木史上価値が高い。長い年月の風雨にさらされた石積みの堰堤は、まるで中世ヨーロッパの古城を思わせる偉容と風格があり、周囲の山並みと見事に調和している。
 流域は昔から水不足に悩まされており、大正時代の二度の大干ばつを契機として近代式ため池の必要性が高まった。県営工事として1926年(大正15・昭和元)年に着工したが、実際の建設に携わったのは地元の農家である。1929(昭和4)年の竣工から1世紀近くを経た現在も貯水量159万m3を擁する現役のため池であり、受益地の大野原は全国有数のレタス産地となっている。
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みどころ

ダムの改修工事に合わせて周辺の整備が行われ、ダムの正面下側は遊水公園となっている。放水時でなければ、ダムのすぐ真下まで近づくことができ、洪水吐から流れる水が石積みの扶壁を伝う様子、減勢池の構造など細部のデザインに見入ってしまう。公園内の遊歩道や県道からため池側へもアクセス可能で、ダムを上から見ることもできる。木々に囲まれた山間部にあり、桜、新緑、紅葉など季節ごとの風景を楽しめる。
 ゆるぬき(放水)の日程は、下流の井関池の貯水量が減った時を目安にしているため決まっておらず、例年7月中旬から下旬に行われ、毎年多くの見物客が訪れている。(勝田 真由美)
関連リンク 観音寺市(WEBサイト)
参考文献 観音寺市(WEBサイト)
うどん県旅ネット(公益社団法人香川県観光協会)(WEBサイト)
農林水産省(WEBサイト)
『香川県の歴史散歩』(山川出版社)

2022年11月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。