旧毛利家本邸(毛利博物館・毛利氏庭園)きゅうもうりけほんてい(もうりはくぶつかん・もうりしていえん)

JR山陽本線防府駅から北東に2.5km、多々良山麓の高台にある。萩(長州)藩の旧藩主毛利家*の旧本邸で、1916(大正5)年に建設*され、現在は毛利博物館、毛利氏庭園として一般に公開されている。国の名勝指定を受けている面積は庭園部分が約8万4,000m2、邸宅の敷地部分が約4,000m2に及ぶ。広大な敷地のなかに、南側に庭園、北側に本館ほか複数の棟からなる豪邸が配置されている。
 本館は、建築面積が約1,003m2で一部2階建、入母屋造及び寄棟造で、客間や居間、 詰所など機能別の各棟をロの字に配し、中庭を囲む形状となっている。当時の建築技術の粋をこらし、とくに客間は檜柾目の木材や飾金具、金粉を用いた壁紙などが用いられている。また、全体としては和風の造りではあるが、コンクリート造や鉄骨造り、レイアウトなどに近代的な建築手法も取り入れられている。
 本館の一部と、1987(昭和62)年に完工した収蔵庫・展示室を毛利博物館としており、約1万点余りの毛利家文書、冑・刀剣などを含む美術工芸品3千点をはじめ毛利家に伝来する約2万点の史・資料を収蔵し、順次展示公開をしている。
庭園は、多々良山の緑を背に防府市街、瀬戸内海を借景とし、中央の一段下ったところには大きな瓢箪池が広がり、本館や周囲の豊かな植栽を映している。池周辺の広い庭には自然を活かしつつ、植栽はもちろん、石組、東屋、石橋、芝生などが巧みに配され、その間を回遊路が巡っている。
 博物館入館と庭園入園はいずれも有料。共通券もある。
#

みどころ

防府の市街中心部から多々良山へ向かって、なだらかな坂を登っていくと総ケヤキ造の総門に辿り着く。この門の内は、もう別世界だ。右手に渓流に沿ってカエデが植えられ、左手はツツジの植栽、正面は自然林が多々良山の緑へとつながっている。しばらくして、右手に折れると石橋があり、それを渡ると、中央に大きな植栽が植えられている広々とした前庭に出る。その植栽をぐるりと半周したところに本館の玄関があり、右手側に庭園の入口となる中雀門がある。玄関脇の券売所で入館料または入園料(共通券もある)を購入し、博物館のある本館や庭園に入ることになる。
 まず、庭園だが、中雀門を入ると、その広さに驚く。本館を背に庭を見渡すと、まず目に入るのが邸内の池とは思えないほど広い瓢箪池、満々と水を湛えている。全体としては、南にゆるやかに下っており、渓流や滝が造り込まれ、巧みに石組、石燈籠、石橋が配されている。庭園内はくまなく回遊路があり、隅々まで巡ることができ、いろいろな視点から庭園美を楽しめる。瓢箪池も1周することが可能で、南側からは壮大な本館や借景を見事に映し込んだ景観を楽しむことができる。
 玄関から本館に入ると、こちらもまずは部屋数60といわれる広壮さに驚く。また、客間や居間の精緻な造りには眼を瞠るものがある。2階からの庭園、借景の眺望も必見。奥に入っていくと博物館の展示室になるが、小規模ながら充実した展示物が公開されている。とくに毛利家関連の文書が数多く展示されており、解説と現代語訳が適切で、戦国時代の大名間あるいは親族・主従間の生々しいやりとりがよく分かるようになっている。
#

補足情報

*毛利家:家祖は鎌倉幕府創設に関わった大江広元で、その子季光が本拠地としたのが相模国毛利荘(神奈川県厚木市)だったことから、毛利を名乗るようになった。その後、本拠地を安芸国吉田荘(広島県安芸高田市)に移した。毛利家14代当主輝元は、豊臣政権下では中国地方で約112万石を領するほどになったが、関ヶ原の戦で西軍に加わり周防・長門2カ国に減封となり、1604年(慶長9)本拠地を萩に移した。1863年(文久3)年に山口へ拠点を移してからは山口藩と改称している。表高は約37万石。支藩としては長府・徳山・清末の3藩と後に岩国藩が加わった。輝元は萩移転時には、すでに家督を長男秀就(ひでなり)に譲っていたので、初代藩主は秀就とされ、以後、明治期の廃藩置県まで14代にわたる。14代目の元徳は明治維新後に公爵となっている。なお、防府との関係は、瀬戸内海の要衝で毛利水軍の本拠(防府三田尻)であることから毛利家はこの地を重視しており、周防国分寺、防府天満宮への崇敬も篤かった。7代藩主重就は隠居所をこの地に設けている。
*建設:毛利家本邸にあたっては、家臣であった井上馨(外務大臣など歴任・元勲)が旧藩主にふさわしい本拠を、ということでこの地を選定したという。
関連リンク 公益財団法人毛利報公会(WEBサイト)
参考文献 公益財団法人毛利報公会(WEBサイト)
文化庁「文化遺産オンライン」(WEBサイト)
毛利氏庭園・旧毛利家本邸・毛利博物館パンフレット
臼杵華臣「毛利博物館ーその歴史と伝来の文化財」防府毛利報公会 平成18年
山口県文書館「防長風土注進案 第9巻」三田尻 1983年 38/388 国立国会図書館デジタルコレクション

2025年03月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。