千光寺公園せんこうじこうえん

千光寺公園*は、JR尾道駅から北東に約1km、標高144.2mの千光寺山の山頂から中腹にかけて広がる公園。園内には、千光寺を中心に、全長約63mの展望デッキが特徴の頂上展望台、安藤忠雄氏の設計による尾道市立美術館、林芙美子*をはじめとした尾道ゆかりの文人の作品を刻んだ文学碑が点在する「文学のこみち」などがある。眼下には瀬戸内の多島景観が広がり、天気の良い日には四国連山をも遠望できる。山頂およびこれに至る登山道にはサクラが植栽され、春にはソメイヨシノ、しだれ桜、八重桜など1,500本のサクラが咲き誇る。初夏にはフジが紫とピンクの花をつける。
 千光寺は、平安時代の始め806(大同元)年の開基で、中興は源氏の名将多田満仲と伝える古刹。断崖に張り付くようにして本堂・客殿・鐘楼などが建ち、境内には巨岩・玉の岩などの奇岩が多くある。
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みどころ

千光寺公園がある尾道山手地区は、港のすぐそばまで山が迫り、坂道ばかりの道筋にむかしながらの家々や由緒ある古寺がぎっしりと軒を寄せ、情緒深く、落ち着いている。千光寺公園への登りはロープウェイを利用するもよし、延々と続きそうな坂の街・尾道らしい石段を上がるもよし。下りは尾道水道や尾道の街並みに向かって徒歩で降りるのがオススメ。文学のこみちを歩きながら、多くの文人墨客に愛された尾道の風景を堪能したい。千光寺の朱塗りの舞台造りの本堂からの眺望は必見。2022年には、山頂に新しい展望台PEAK(ピーク)と視点場MiTeMi(ミテミ)がオープンした。
 春は、瀬戸内海の多島景観を背景にしたサクラが素晴らしい。見頃の時期には、例年ライトアップが実施され、夜桜も楽しめる。
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補足情報

*1894(明治27)年より、四国・阿波国生まれの三木半左衛門(尾道市名誉市民)により共楽園(天寧寺三重塔付近)の開発が始まった。その後尾道市への寄贈などを経た上、開発は尾道市が引き継ぎ1905(明治38)年に完成。名前も共楽園から千光寺公園に改められた。
*林芙美子『放浪記』より:海が見えた。海が見える。五年振りに見る尾道の海はなつかしい、汽車が尾道の海へさしかかると、煤けた小さい町の屋根が提灯のように、拡がって来る。赤い千光寺の塔が見える。山は爽やかな若葉だ。緑色の海向うにドックの赤い船が帆柱を空に突きさしている。私は涙があふれていた。