黒島ヴィーナスロードくろしまびーなすろーど

岡山ブルーライン邑久ICから約15分、JR赤穂線西大寺駅または邑久駅からバスで約30分、岡山県南東部、瀬戸内市の牛窓は古くから西国航路の風待ち、潮待ちの港として栄え、『万葉集』や『山家集』などにも詠まれている。江戸時代には、参勤交代や朝鮮通信使の寄港地として繁栄した。近年では、温暖な気候と点在する島々の風景から、「日本のエーゲ海」*とも呼ばれる。牛窓沖には牛窓諸島が点在する。牛窓港の前面にあるのが有人島の前島であり、その南西沖すぐのところに黒島*、中ノ小島、端ノ小島の3つの島が浮かぶ。この3つの島は潮がよく引く日の干潮前後に約800mの砂州が現れ、弓形につながり、歩いて渡ることができる。この砂の道を、地元のホテルが公募により「黒島ヴィーナスロード」と命名した。道がつながるのは1か月のうち20日前後、1回に2時間ほど。本土から歩いて渡ることはできないため、ホテルの桟橋か、牛窓港フェリー乗り場または「かぜまち桟橋」から予約制の送迎ボートを利用する(黒島までは5~10分ほど)。また、前島港発のシーカヤックのツアーを利用することもできる。陸地から近く、海も穏やかで、日没が近い時間にも設定されている。
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みどころ

「黒島ヴィーナスロード」では、沖に浮かぶ島どうしをつなぐ砂州が海面すれすれに現れ、まるで海の上を歩いているかのような感覚を味わうことができる。週末やハイシーズンには、潮が完全に引かずくるぶしくらいまで海水に浸かる場合でも船が出ることがある(12月~2月は休航)。春の大型連休頃までは、思いのほか海水温が低いので注意が必要。
 古くからの港町の面影を残す牛窓の町並みは「しおまち唐琴通り」として整備され、古民家がカフェや工房などに転換されている。ゆるやかにカーブするメインストリートとそこから連なる細い路地や階段、坂道が楽しい。高台にはいくつかの寺社があり、そのなかには朝鮮通信使の宿館となった本蓮寺や牛窓の地名の由来*にまつわる牛窓神社、五香宮などがある。前島との海峡、「唐琴の瀬戸」には古くから船の安全を見守ってきた燈籠堂*が建ち、川のように流れる速い潮流も瀬戸内海ならでは。
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補足情報

*黒島:周囲1.5kmほどの無人島で、岡山県の「青少年の島」として整備されている。「岡山県青少年の島」は電気、ガス、水道のない島で、日常生活では得られない自然体験、生活体験を通じて、たくましい青少年に育つことを願って整備されたもの。原則として県内の青少年の団体とその引率者が利用できる。
*日本のエーゲ海:1978(昭和53年)年にギリシャ観光局局長が来日した際、オリーブ園から見た海の景色が、ふるさとのエーゲ海に似ていると「日本のエーゲ海」と命名した(瀬戸内市観光協会)。
*牛窓の地名の由来:「備前風土記逸文」によれば、神功皇后が船で海を渡っていたときに大きな牛鬼が現れ、老人に化けた住吉明神がその角をつかんで海へ投げ倒したという。牛が転んだ「牛転(うしまろび)」から訛って牛窓になったと伝わる。
*燈籠堂:17世紀後半の創建とされる。明治時代に撤去されたが、1988(昭和63)年に再建された。