出雲そばいずもそば

出雲地方に本格的にそばが広まったのは、1638(寛永15)年、そば処の信州松本から松平直政が出雲松江藩主として着任した際に、そば職人を連れてきたことが始まりと言われている。
 出雲そばは、そばの実と甘皮まで全て挽いた「挽きぐるみ」*と呼ばれるそば粉を使用しているため、色が濃く香りと風味が強いのが特徴。
 そばの品種は、早く収穫でき安定した収量を得られることから全国でも普及している信濃1号が大半を占めているが、県内のそば屋等からの要望を受けて島根県が開発した地域固有のオリジナル品種「出雲の舞(2014(平成26)年公表)」も栽培されている。
 出雲そばは盛り付け方にも特徴があり、3段の器に盛る「割子そば」*が有名。基本ぶっかけで、だし汁をかけ、ネギ・カツオ節・海苔などの薬味をかける。通常はわさびではなく紅葉おろしを用いる。割子3段が一般的な1人前で、1段ずつ追加もできる。
 また、「釜揚げそば」という食べ方もある。これは、茹でた出雲そばを水洗いせずそば湯とともに食べるもので、そば湯の中にだし汁を加えて味をつけて食べる。かつて出雲大社詣での参道の屋台で、水で締めることができずに出されていた方法が、そのまま伝統的に残ったものだと言われる。
 出雲そばを提供している店舗は、出雲大社参道、また県東部*に多い。
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みどころ

挽きぐるみのため、色が黒く、香りが良く、通常のそばよりも食感はずっしりとして重たいが、噛めば噛むほど味わいのあるそばである。のどごしよりも、そばの香りと深い味わいを楽しみたい。釜揚げそばは、そば湯とともに食べることでそばの香りがより引き立ち、またとろみもあって体が温まる。
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補足情報

*挽きぐるみ:そば粉を製粉する際は、一番粉から三番粉の三種類に分類されるのが一般的である。例えば、そばの実の中心部分を挽いた一番粉を使ったそばは「更科そば」と呼ばれ、外殻に近い部分から挽いた三番粉を使ったそばは色黒で「藪そば」や「田舎そば」などと呼ばれる。出雲そばは、粉の選別をせず、玄そば(殻のついたそばの実)をそのまま挽き込む「挽きぐるみ」でつくられる。
*割子そば:割子そばの割子は江戸時代、松江の趣味人たちはそばを弁当として野外へと持ち出していたが、その際の四角いお弁当型が基となっている。しかしそれでは四隅の洗浄など衛生的な管理に問題があるとして、松江警察署長の発議により、丸形漆塗りの器に変更されたと言われている。
*県東部では自宅でそばを打つ趣味を持つ人も多く、それが高じて店舗を開業する場合もある。また「出雲そばりえの会」という会員制度もあり、出雲そばの研究や、そば打ちを通しての交流や情報交換などが行われている。