しゃんしゃん祭しゃんしゃんまつり

鳥取しゃんしゃん祭は、踊り手が傘を持って舞い歩く「しゃんしゃん傘踊り」を中心とするもので、8月のお盆に鳥取市の中心街で開催される。全国でお祭り時に住民が踊るのは盆踊りに代表される「手踊り」が基本で、「笠踊り」は山形の花笠、佐渡のおけさ笠など少数派である。まして柄の付いた傘を操る「傘踊り」はこのしゃんしゃん祭以外*にはほとんど例が無い。この踊りは鳥取市国府・横枕・津井(つのい)に江戸時代から伝わる郷土芸能「因幡の傘踊り」*を皆が踊れるようにアレンジしたものである。
 その経緯を見ると、鳥取市では1961(昭和36)年、地元の神社の例祭に合わせて市民レクリエーションと観光振興を目的として鳥取祭を始めた。そして市民が参加しやすいように踊りは因幡の傘踊りの振り付けをもとに「しゃんしゃん傘踊り」を創作し、祭り自体も1965(昭和40)年から「しゃんしゃん祭」と名付けられたのである。
 踊りに使う傘は直径80cm×長さ120cmと因幡の傘踊りの傘より小型化され、金・銀・赤・青などの鮮やかな色彩で彩られている。骨の中ほどには多数の小鈴が取り付けられており、これが踊りの要所でシャンシャンと鳴り響く。
 「しゃんしゃん祭」はこの鈴の音と、鳥取駅前の鳥取温泉で湯がシャンシャンと湧くことをかけて名付けられた。曲は「きなんせ節(鳥取方言でいらっしゃい)」で、この当時、各地で作られていた観光振興のためのご当地音頭である。
「一斉傘踊り」の参加者数はかつて4,000人前後であったが、コロナウィルス後、初の平常開催である2023(令和5)年の祭りでは82連(団体)、2,100人の参加となっている。
なお、2006(平成18)年からは新たに「すずっこ踊り」が加わっている。6個の鈴を付けたしゃもじ状の板を両手に持って踊るもので、しゃんしゃん踊りよりもさらに参加しやすく、自由に創作した振り付けで踊れるようになっている。
#

みどころ

しゃんしゃん祭の見どころは8月のお盆の18時から市内で開催される「一斉傘踊り」である。鳥取駅前を起点に若桜街道を北上し、片原通りを廻って智頭街道を南下して一巡する3km弱のコースで演舞される。白地に赤・青・金銀で鮮やかに塗り分けられた傘を一斉に回転させながら踊ると鈴がシャンシャンと鳴り響く。その鈴の音と“はいはいはい”という掛け声による軽やかでリズミカルな踊りが続く。道路一杯に広がった傘が目まぐるしく動き、回転し、波のように揺れる様は壮観である。
 踊りに使う傘は共通のものであるが衣装は自由で、それぞれの連により浴衣や法被が工夫されている。町内会、企業、子供会、踊りの有志、学校、若者グループ等々の衣装を見るのも楽しみの一つとなる。演舞の曲は基本となる「きなんせ節」と「鳥取しゃんしゃん傘踊り」に加えて「平成鳥取音頭」、「しゃんしゃんしゃんぐりら」の4曲が踊られている。
 一斉傘踊りの前日は市内の風紋広場で前夜祭が行われる。傘踊りに加えて「すずっこ踊り」の演舞披露も行われる。混雑する沿道で見るよりは落ち着いて観賞できるだろう。また、ちょっと体験してみたい人向けに当日、傘踊り体験コーナーも設けられている。
#

補足情報

*傘踊り:類似する郷土芸能としての傘踊りには以下がある。
・岡山県笠岡市大島地区に伝わる傘踊り(岡山県県指定 重要無形民俗文化財)。お盆の夜に2人1組で傘を刀に見立てて斬り合うように踊る。
・指宿利永琉球傘踊り(指宿市指定無形民俗文化財)薩摩に訪れていた琉球使節団との交流を物語る踊り。
・和歌山県紀美野町小川に伝わる傘踊り(町指定無形民俗文化財)。江戸時代に雨乞いのために始まったと伝えられている。
*因幡の傘踊り:徳川時代末期、旱魃(かんばつ)の時に五郎作という農夫が冠笠(かんむりがさ)を振り回しながら三日三晩、雨乞いの踊りをして成功したものの、その後疲労で死亡したという伝説に始まる。この五郎作を偲んで村人たちがお盆に冠笠を手にして踊るようになったと伝えられている。1896(明治29)年に国府町の山本徳次郎がこの雨乞い踊りに神官が使用する長柄の傘と剣舞の型を振り付けに取り入れて、現在の傘踊りとなった。鳥取県無形民俗文化財に指定されており、鳥取市国府町と横枕地区で伝承されている。現在では雨乞いよりも初盆供養として行われている。このほか、鳥取市国府町では因幡の傘踊保存会が中心となって、8月に「因幡の傘踊りの祭典」を開催している。子供から大人までの約20の傘踊りチームが競演する。
関連リンク 鳥取しゃんしゃん祭り振興会
参考文献 鳥取しゃんしゃん祭り振興会

2024年06月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。