南部梅林みなべばいりん

南部梅林は、南紀白浜空港から北に約20km、JR紀勢本線から北東へ約3km、南部川の川岸段丘4kmにわたって広がる梅の里である。晩稲(おしね)地区の香雲丘(こううんきゅう)に梅が植えられており、日本有数のスケールを誇る。梅干しの生産で日本一の規模を誇るみなべ町の梅林は基本的に果実採取のための産業用の農林であり本来は観光目的ではないが、1月下旬から3月上旬ごろの香りが漂う観梅期には花見を楽しむことができる。みなべ・田辺地域を合わせると生産量は約4万9000t(2019年)、国内シェアの約55%を占める。栽培種のほとんどは高級品種の南高梅*であるが、山頂付近に整備された梅林公園には数種類の観賞用品種が植えられている。観梅期間中には見頃に合わせ「梅まつり」など様々なイベントが開催され数万人の来場者でにぎわう。
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みどころ

「一目百万香り十里」と称される日本有数のスケールを誇る梅林園内には1周約3〜4kmほどの遊歩道が数コース設けられており、南部川河岸のなだらかな山々に見渡す限りの梅林が続く。丘陵の麓にある駐車場やバス停から梅園の入園門まで400m、見晴らしのよい梅林公園までは700mある。山頂付近からは梅の花びら越しに梅加工場が集積するみなべの街並みから南部湾までが見渡せる。林内はかなりのアップダウンと距離があるので体力に合わせてコースを選び、ゆっくりと周りたい。
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補足情報

*南高梅:南部梅林は、江戸時代の初め、南部川村の痩せた土地に農民が梅の木を植えたのが始まりといわれている。養分に乏しく礫質で崩れやすい斜面を利用しつつ、400年以上にわたり高品質な梅を持続的に生産してきた背景には、ミツバチとの共生による大規模受粉、紀州備長炭の原木林保護による農地保護、生産者と加工業者との連携による梅加工品の高品質化など、先人の知恵と工夫がある。この地の農業システムは「みなべ・田辺の梅システム」として2015(平成27)年に世界農業遺産に認定されている。