南方熊楠記念館みなかたくまぐすきねんかん

南紀白浜空港から北西へ約5km、南紀白浜温泉の中心街からほど近い番所山にあるのが、日本の博物学者・生物学者・民俗学者として多くの研究実績を残した南方熊楠の記念館である。熊楠の没後、博物学の巨星を後世に伝え、学術振興と文化の進展を図ることを目的として1965(昭和40)年4月に開館。遺族から資料の寄贈を受け、南方熊楠の遺した業績と遺徳を偲び、その文献、標本類、遺品等を永久保存するとともに一般公開した。記念館本館は東京帝国大学工学部出身の建築家・野生司義章が設計し、総工費約3,500万円かけ建設された。戦後に建設された建物としては和歌山県初、白浜町においても町内初となる文化庁登録有形文化財。2019(令和元)年に認定、登録された。
 また新館建築工事を2016(平成28)年11月から実施し、2017(平成29)年3月に新館がオープンすると同時に本館も再開館した。館内には常設展示と特別展示の二つの展示室で所蔵資料の一部が写真や年表とともに解りやすく展示されている。
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みどころ

常設展示では5つのテーマに分けて熊楠の生涯、研究について解説している。熊楠が昭和天皇に御進講したことで有名な「粘菌(変形菌)」を顕微鏡で見ることができる。生きた粘菌を常時見られるのはここだけ。新館の各階にはテーマがあり、1階は全面ガラス張りのエントランスホールとピロティを配置し周囲の樹木が浸食してくる「浸の空間」、2階の展示室は貴重な収蔵品を守り、展示をとおして熊楠の世界とじっくり向き合うことができる「閉の空間」を、屋上階の展望デッキからは白浜の海や空、熊野の山々が全方向に一望できる「開の空間」となっている。開放的な展望デッキからは、田辺湾、神島、円月島、白浜温泉街、遠くは四国まで見通せる。
 記念館のある番所崎は遊歩道や展望台、広場などが整備されており、展望塔からは円月島の裏側を望むことができ、来館とあわせて散策してみるのも良いだろう。なお、記念館が所在する白浜町番所山の辺りは、南方熊楠が研究のフィールドとした場所でもある。番所山の麓には京都大学白浜水族館もある。
 田辺市内には熊楠の生活と研究の拠点であった邸宅が一般公開されており、南方熊楠邸に遺された蔵書・資料が隣接する南方熊楠顕彰館*で保存・展示されている。白浜の記念館と合わせてぜひ訪れたい。
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補足情報

*南方熊楠顕彰館:JR紀伊田辺駅 徒歩10分。