金剛山寺(矢田寺)
近鉄橿原線郡山駅から西へ約4km、矢田丘陵の中腹にあり、矢田寺の名で知られる。「矢田地蔵縁起」*1の詞書では673(天武天皇2)年、入唐して玄奘から「唯識」(法相宗の仏教思想)を学んだと言われる智通が勅願により開基したと伝え、十一面観音を本尊とした。平安期に入り、中興の祖・満米(まんまい)上人によって地蔵菩薩を本尊とし、「矢田の地蔵さん」と呼ばれ、隆盛を誇った。往時は寺坊が48坊もあった大寺であったが、現在は高野山真言宗の塔頭4ヵ寺*2で運営されている。
山門から長い石段を登りつめると、塔頭の白壁が続く参道の奥に本堂が現れる。堂内の厨子には本尊の地蔵菩薩立像*3を中心に十一面観音、吉祥天を安置し、ほかに阿弥陀如来などを祀る。境内には講堂、鐘楼、閻魔堂、春日神社*5などが建ち並び、「みそなめ地蔵」*6など庶民信仰の石仏が佇んでいる。サクラ・ツツジにつづいて6月には約60種、1万株のアジサイ*7が咲く、花の寺でも知られる。
年中行事としては、例年4月の第3日曜日の「お練り供養」*8が名高い。
山門から長い石段を登りつめると、塔頭の白壁が続く参道の奥に本堂が現れる。堂内の厨子には本尊の地蔵菩薩立像*3を中心に十一面観音、吉祥天を安置し、ほかに阿弥陀如来などを祀る。境内には講堂、鐘楼、閻魔堂、春日神社*5などが建ち並び、「みそなめ地蔵」*6など庶民信仰の石仏が佇んでいる。サクラ・ツツジにつづいて6月には約60種、1万株のアジサイ*7が咲く、花の寺でも知られる。
年中行事としては、例年4月の第3日曜日の「お練り供養」*8が名高い。
みどころ
江戸前期の「大和名勝志」にも金剛山寺は「智通僧正ヲシテ伽藍ヲ創建セシメラレタリ 是レ即チ當山ノ濫觴ナリ 當時四十八ノ坊舎アリテ頗ル麗シ極ム 今尚其跡ヲ存セリ 寺ハ矢田山ノ中腹(故ニ單ニ矢田山トモ云フ)ニ在リテ尤モ眺望ニ富ミ全国(大和国)ノ平野山嶽概ネ一望ノ中ニ攅(サン あつめる)スル」と、かつての盛んであったことと、眺望の素晴らしさを記している。現在も堂宇や仏像、石仏群に往時の面影が遺り、奈良盆地やそれを囲む山々の景観はいまも佳景といえよう。
補足情報
*1 「矢田地蔵縁起」:異本が多数あるが、智通による開基については、「詞書」が付されている本にのみ記されている。絵巻のみの本には「満米上人巡獄地蔵像造立譚」、「武者所康成蘇生の霊験譚」、「広瀬の小児蘇生の霊験譚」の三つの説話が描かれているが開基には触れられていない。
*2 塔頭4ヵ寺:大門坊、念佛院、北僧坊、南僧坊。
*3 地蔵菩薩立像:右手をあげて掌を前に向け、第1指と2指を捻じ、左手は前に曲げて宝珠を持つ。矢田型地蔵と呼ばれ、藤原時代初期の等身・彩色の木像で量感に富む。本堂内にもう1躯鎌倉時代の地蔵像(通称「試みの地蔵」)がある。
*4 閻魔堂:丈六の閻魔王像はじめ地獄の裁判官である十王・奪衣婆を祀る。奪衣婆には1591(天正19)年の墨書がある。
*5 春日神社:建立年代は室町時代末期と考えられており、かつては金剛山寺の鎮守であった。境内に南面して建つ社殿で、1間社春日造、檜皮葺。国指定重要文化財。
*6 みそなめ地蔵:鎌倉時代後期に置かれたという石仏で、自家製の味噌を口元に塗ると味が良くなるとされている。
*7 アジサイ:本尊である地蔵菩薩が手にしている宝珠の形にアジサイの花が似ていることから、1965(昭和40)年頃から植え始めた。アジサイの開花は6月が中心だが、5月中旬に咲き始めるツルアジサイや9月頃に咲く中国原産のアジサイも植えられている。
*8 お練り供養:4月第3日曜日。「おねり」は、「矢田地蔵縁起」による地蔵菩薩の出現と、満米上人の冥土往来の様子を再現。菩薩堂より本堂への渡後橋を、25菩薩や鬼、閻魔大王等が 地蔵とともに練り渡る。(お渡は休止中)
*2 塔頭4ヵ寺:大門坊、念佛院、北僧坊、南僧坊。
*3 地蔵菩薩立像:右手をあげて掌を前に向け、第1指と2指を捻じ、左手は前に曲げて宝珠を持つ。矢田型地蔵と呼ばれ、藤原時代初期の等身・彩色の木像で量感に富む。本堂内にもう1躯鎌倉時代の地蔵像(通称「試みの地蔵」)がある。
*4 閻魔堂:丈六の閻魔王像はじめ地獄の裁判官である十王・奪衣婆を祀る。奪衣婆には1591(天正19)年の墨書がある。
*5 春日神社:建立年代は室町時代末期と考えられており、かつては金剛山寺の鎮守であった。境内に南面して建つ社殿で、1間社春日造、檜皮葺。国指定重要文化財。
*6 みそなめ地蔵:鎌倉時代後期に置かれたという石仏で、自家製の味噌を口元に塗ると味が良くなるとされている。
*7 アジサイ:本尊である地蔵菩薩が手にしている宝珠の形にアジサイの花が似ていることから、1965(昭和40)年頃から植え始めた。アジサイの開花は6月が中心だが、5月中旬に咲き始めるツルアジサイや9月頃に咲く中国原産のアジサイも植えられている。
*8 お練り供養:4月第3日曜日。「おねり」は、「矢田地蔵縁起」による地蔵菩薩の出現と、満米上人の冥土往来の様子を再現。菩薩堂より本堂への渡後橋を、25菩薩や鬼、閻魔大王等が 地蔵とともに練り渡る。(お渡は休止中)
2024年12月現在
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