奈良女子大学ならじょしだいがく

近鉄奈良線奈良駅から北へ約500m、佐保川の南岸にある国立の女子大学。1908(明治41)年に奈良女子高等師範学校として創立され、1949(昭和24)年に新制大学となった。現在は、奈良国立大学機構(2022年4月から)傘下の大学として文学部、理学部、生活環境学部、工学部の4学部が設置されている。明治期から近代女子教育の中心的な学校であったことから、現在のキャンパスにもその歴史を示す建造物と面影が遺されている。とくに正門から入って正面にある奈良女子大学記念館*1は、奈良女子高等師範学校本館として、創設当初の1908(明治41)年に竣工し、1階は事務室、2階は講堂として、1990(平成2)年まで使用されてきた。1994(平成6)年に保存のために改修され、守衛室(附正門)*2とともに国の重要文化財に指定された。現在は、1階は展示室、2階は講堂として利用されている。また、同窓会館の佐保会館*3は国の登録有形文化財となっている。
 奈良女子大学記念館の一般公開は例年春季が4月下旬~5月上旬、秋季は10月下旬~11月上旬に1週間程度行われる。また、それ以外でも見学可能日が設けられているが、こちらは事前予約が必要。
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みどころ

正門から記念館を見通すと、若草が萌えるような柔らかな色彩、文様や巨大な屋根から突き出した塔屋やドーマー(窓)など、全体としては穏やかな雰囲気をもつ建物。近代的なところを取り入れながらも日本の伝統的な意匠もあり、日本の近代女子教育の中心的な学校としてのアイデンティティをそのまま示しているような雰囲気が漂う。周辺には現代的な学校建築物が建ち並ぶので、余計にその歴史の重さを感じさせる。
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補足情報

*1 奈良女子大学記念館:建築面積495m2、木造2階建、寄棟造、桟瓦葺。設計工事は京都帝国大学建築部長・山本治兵衛を中心とした文部省建築課。外観はヨーロッパ北部に見られる、木部を外に表す壁構造のハーフティンバー様式を採用。外壁は2階の腰までを板壁とし、その上は漆喰壁。縦長の上げ下げ窓の上下に、曲線形にデザインされた木材をとりつけ変化を付けている。南面には平屋建の旧事務局長室が後から増設されている。2階の講堂は、300人収容の規模で、無柱。天井には半円形の天窓などさまざまな装飾が施され、換気口も花形飾りの意匠が凝らされており、格調が高いなかにも随所に変化に富んだ内装の工夫がみられる。
*2 守衛室(附正門):建築面積20m2、木造、鉄板葺。十字形平面の建物。屋根の棟飾りや窓廻りなど本館と同様のデザインとなっている。
*3 佐保会館:奈良女子高等師範学校・奈良女子大学の同窓会である佐保会が所有する同窓会館。1928(昭和3)年9月竣工。奈良県吉野出身の建築家岩崎平太郎(1893~1984年)の設計。明治期に建設された奈良ホテルなどと類似した伝統的な意匠が取り入れられ、階段手摺りの擬宝珠、広間の格天井、窓枠などに特色がみられる。桁行13間(約24m)、梁間6間(約11m)の木造2階建、入母屋造、漆喰塗壁。
関連リンク 奈良女子大学(WEBサイト)
参考文献 奈良女子大学(WEBサイト)
文化遺産データベース(WEBサイト)
一般社団法人佐保会(WEBサイト)

2024年12月現在

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