丹波焼の里たんばやきのさと

JR福知山線相野駅から北西へ約6km、四斗谷川に沿った谷あいの今田(立杭)地区に、約60軒ほどの丹波焼の窯元が軒を連ねており、「丹波焼の里」と称している。この地区は窯元のほか、「丹波伝統工芸公園 立杭陶の郷」*や「兵庫陶芸美術館」*など丹波焼に関する施設も整備されている。なお、地名から「丹波立杭焼」とも呼ばれている。
 丹波焼は、日本の陶磁器窯のうち中世から現在まで生産が続く日本六古窯*の一つとされる。その発祥は平安時代の終わりから鎌倉時代の初めとされており、安土桃山時代までは穴窯が使用されていたが、江戸時代初期以降現在に至るまでは朝鮮式半地上の「登窯」による焼成が行われている。このため、丹波焼の作品は穴窯時代と登窯時代に大別されている。
 登窯は「蛇窯」とも呼ばれ、傾斜地に複数の焼成室が連なる連房式で、窯の中を焚き口から斜面に沿って火が上へと抜ける直炎式の構造となっている。登窯は穴窯に比べ焼成時間が短く、大量生産に適していることから、近世になって朝鮮半島から導入された。
 作品としては、穴窯時代は紐土巻き上げづくりの無釉の壺や甕が中心で、登窯時代に入り、成型に蹴りロクロ(左回転の独特のもの)が導入され、釉薬も使用されるようになった。江戸時代は茶道の確立とともに茶器類も生産するようになり、茶道遠州流の始祖小堀遠州の指導による「遠州丹波」が生まれ、名器として珍重された。
 現在は、花器・茶器・茶碗・食器等の工芸品、植木鉢・酒樽など業務用品などが生産されている。とくに工芸民芸品では釘彫り・葉文・印花・流し釉・筒描き・墨流しなどの伝統的な技法に加え、新たな技法、デザインにも挑戦している。
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みどころ

窯元の大半は、四斗谷川の右岸の傾斜地に軒を並べている。車で訪問する場合は、各窯元にも駐車場はあるが、窯元巡りをするなら、まず、「陶の郷」に立ち寄ることをお勧めする。こちらの駐車場に車をおいて、公園の各施設を回り、丹波焼や窯元に関する歴史や技法などの基礎知識を得るのが良いだろう。また、50ほどの窯元の作品を展示販売している窯元横丁で品定めをして窯元巡りをするのも効率的であろう。もちろん、ここで気に入ったものがあれば、購入することも可能だ。窯元が集中するのは川の対岸となるが、窯元では制作現場の見学や体験、作品販売をしているところもあるので、窯元が並ぶ路地から路地を渡り歩いてみるのもよいだろう。
 例年、秋には、丹波焼まつり「秋の郷めぐり」が開催され、窯元めぐり市、うつわ市など、各種イベントが行われる。また、ゴールデンウイークにも「やきものの里『春ものがたり』」も開催されるので、この時期に合わせて訪ねれば掘り出し物に出合えるかもしれない。
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補足情報

*1 「丹波伝統工芸公園 立杭陶の郷」:四斗谷川の左岸の高台に広がる公園。鎌倉から江戸時代までの「古丹波」や新作を展示する「伝統会館」、技法を伝習する伝習会館、陶芸教室、登り窯、レストラン、約50の窯元の作品を展示販売する窯元横丁などからなる。入園有料。レンタサイクルの貸出もある。
*2 「兵庫陶芸美術館」:「陶の郷」に隣接した林の中にある。兵庫県全県の陶芸文化の振興を図り、陶芸を介し人々の交流を深めることを目的とした施設。古陶磁や現代陶芸の展示、資料収集保存、調査研究などの美術館事業とともに、陶芸に関わる人材の養成、体験学習、陶芸文化講座の開催など人材育成、学習事業などを行っている。常設展示と共に随時企画展示も開催している。入館有料。
*3 日本六古窯:越前・瀬戸・常滑・信楽・丹波・備前。