天滝渓谷てんだきけいこく

JR山陰本線養父駅から西へ大屋川に沿って約24.5km。氷ノ山から東に向かう起伏に富んだ尾根に広がる杉ケ沢高原の南麓、大屋川支流に沿う渓谷。最大のみどころは、落差98mの天滝(標高600m)で、滝への登山口の駐車場(標高250m)から山道を約1.2kmほどのところにある。途中、糸滝、夫婦滝、鼓ヶ滝などが点在する。
 この滝が点在する地形は、約250万年前に噴火した杉ヶ沢の轟火山の硬い溶岩が流れ出し、その末端部において溶岩下の軟らかい地層が、長い年月をかけ浸食され造り上げられたと考えられている。登山口付近にはキャンプ場がある。
 天滝までの登山道は、岩盤を削った細い崖道を登るので、登山靴や運動靴など足回りと衣服をしっかり準備する必要がある。
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みどころ

天滝への道はV字渓谷を7つの橋で渡りながら、婦滝、鼓ヶ滝、糸滝などを臨み、あるいは遠望し、渓流とそれを形成する岩盤、植相の変化を観察しながらの山行を楽しむことができる。天滝は、上部では階段状に数段のギャップがあり、ここに落水があたり飛散し、中段からは緩やかな斜面を幾条にもなって滑り落ちる、変化に富んだ景観を見せる滝だ。
 この滝については、1760(宝暦10)年に発刊された地誌「但馬考」にも、「此山スクレテ高シ、飛流直下三千尺、疑ラクハ是レ銀河落ルカト九天ヨリト、太白(李白)カ云シニ異ナラス、故ニ、ムカシ天瀑ト名ツケシトナン」と記し、地元の人たちは「不動アリ」として信仰の対象にしていたことも付記している。確かに銀河が落ちるような98mの落差があるダイナミックな滝と春の新緑、秋の紅葉との取り合わせは見事だ。