玄武洞げんぶどう

JR山陰本線豊岡駅から円山川の右岸を北へ車で15分、同じく城崎温泉駅からは南へ車で10分、円山川に沿って東に面した山裾に、玄武岩*の柱状節理の大岩壁がそそり立つ。岩壁の下部には洞穴があり、これは過去に採石場として人工的に掘られたもので、1925(大正14)年の北但大震災の際に崩落し、また自然崩落の危険性もあることから、今は入洞ができなくなっている。人工的に掘り込まれた跡と自然が造形した六角形の大岩柱が細密に重なり合ったように見え、幾何学的な模様を呈している。採石された石は、家屋の石垣や城崎温泉の街中を流れる川の護岸に使われるなど、人々の暮らしに活用されてきた。
 玄武洞の名前は、1807(文化4)年、儒学者柴野栗山が、柱状節理が露出した岩壁の模様等を中国の神話の神獣「玄武」の姿を連想し、「玄武洞」と命名したのがはじまりである。この玄武洞を中心に公園が整備されており、青龍洞・白虎洞・南朱雀洞・北朱雀洞*などの玄武岩の柱状節理の岩壁が点在する。
 こうした柱状節理は、約160万年前、付近一帯に起った火山活動によって流出した溶岩流が冷却される際、外気に触れた部分から徐々に固まり、六角形の柱状に形成された。
 公園前には、石の博物館「玄武洞ミュージアム」があり、玄武洞の地質資料や鉱物・貴石、化石・恐竜の骨格などが展示されている。また、さまざまな石の体験や「豊岡杞柳細工」のかご編み体験もできる。玄武洞公園の入園、玄武洞ミュージアムの入館、ともに有料。
#

みどころ

円山川の川べりから緑濃い公園へ登っていくと、正面に美しい筋目をくっきりさせた柱状節理が迫ってくる。これが玄武洞である。岩壁の下部にある人の手で採掘された洞穴は、縦方向と横方向の柱状節理が自然の造形美となっている。玄武洞の南側にある青龍洞は、流れるような柱状節理が水面に映り、美しい。玄武洞の北側にある白虎洞は、水平方向の柱状節理がよりきめ細かく流れているのが特徴。南・北の朱雀洞は、節理のない溶岩流の先端部とその先に柱状節理があり、この地での柱状節理の形成過程を見せてくれている。公園内は春の桜、初夏の新緑、秋の紅葉、冬の白雪が、黒い玄武岩を引き立たせ、ひときわすばらしい眺めとなる。
#

補足情報

*玄武岩:火山岩のなかでも、地球上でもっとも多量にある岩質。カンラン石、輝石、磁鉄鉱などの有色鉱物の構成比率が高いので暗灰色していることが多い。比較的粘性の低いマグマによって生成されるため、溶岩層や岩脈の厚さは薄いとされている。玄武岩の名は、「玄武洞」の地名から命名された。
*青龍洞・白虎洞・南朱雀洞・北朱雀洞:青龍洞は玄武洞の南側にあり、公園内で2番目に大きい。白虎洞は玄武洞の北側、南・北の朱雀洞はさらに北側に並んでいる。なお、玄武以外の青龍・白虎・朱雀の名も、中国の神話の神獣からとったもので、これらの動物が東西南北のそれぞれの神として、守護していると信じられていた。
関連リンク 玄武洞公園(WEBサイト)
参考文献 玄武洞公園(WEBサイト)
玄武洞パンフレット
玄武洞ミュージアム(WEBサイト)
玄武洞ミュージアムパンフレット
「改訂新版 世界大百科事典 玄武岩」平凡社

2025年03月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。