淡路人形座あわじにんぎょうざ

兵庫県南あわじ市の福良港にある人形浄瑠璃専用の劇場。人形浄瑠璃を常時公演する専用劇場としては大阪の国立文楽劇場とここの2箇所のみである。アクセスはバスまたは車となり、神戸市から明石海峡大橋経由で約1時間20分(90Km)、徳島市から大鳴門橋経由で約40分(40km)、いずれも高速道路利用時である。
 人形浄瑠璃とは室町時代が起源と言われる浄瑠璃(三味線などを伴奏として太夫が劇を語るもの)と人形操り(人が紐や棒で人形を動かす見世物)が組み合わされた伝統芸能で、江戸時代に歌舞伎と並んで人気を得た。音曲は舞台脇の床で太夫と三味線が奏でるのが基本となる。人形操りは三人が呼吸を合わせて一つの人形を操作する「三人遣い」が基本となるが、脇役などは「一人遣い」もある。
 室町時代末期に摂津西宮の百太夫が淡路島に移り住み、地域の人々に人形の操り技を伝授したのが契機となって淡路島で発達した。以降、淡路人形浄瑠璃は江戸時代の徳島藩主蜂須賀(はちすか)氏の保護を受けて繁栄し、18世紀初めには淡路島に40以上の座本・興行主が存在し、全国各地を巡業していた。現在の淡路人形座は1964(昭和39)年に吉田傳次郎座を引き継いで福良の会館で興行を開始したもので、2012(平成24)年に現在の劇場が新築されている。国指定重要無形民俗文化財、文化庁:日本遺産である。
 なお、幕末に淡路島出身の植村文楽軒が大阪で始めた文楽(座)が人気となったため、以降は「文楽」*1が人形浄瑠璃の代名詞となり今日に至っている。
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みどころ

淡路人形浄瑠璃の人形は文楽のそれよりも大きくダイナミックな動きが映えることが特徴で、上映される演目も人形の早替わりや舞台背景を次々と変えるカラクリ「大道具返し」など奇抜で派手な演出が楽しめる。
 観光客が多い立地であるため、特別公演以外は人形浄瑠璃入門編として50分前後の演目を1日4回行っている。入門編の演目は、初心者にも分かり易く人形浄瑠璃の動きや仕組みの解説とともに行う「戎舞(えびすまい)」と、定番で人気の演目からダイナミックな動きのある部分のみを切り出したもの*2を季節や曜日に合わせて演じている。また時期によってはバックステージツアーも行われる。外国人向けには音声ガイドが用意されている。
 劇場内は淡路特産の瓦を多用した内装で、客席後方には実際に使われてきた人形や衣装、小道具などが展示されている。
 179席の小劇場なので予約を入れて行くのが望ましい。またホームページやYouTube・Instagram等で演目のあらすじや浄瑠璃人形の動かし方などを案内しているので、事前に見ておくとより興味が引き立てられる。
 また、淡路人形浄瑠璃資料館*3が淡路人形座から車で15分程の淡路人形浄瑠璃発祥の地(旧、三條村)にあり、資料館として一見の価値がある。
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補足情報

*1 淡路人形浄瑠璃と文楽の違い:淡路人形浄瑠璃の方が人形の造りが大きく、それだけ表情(目や口、眉の操作)と手足の派手な動かし方で迫力が出るのが特徴である。演目はもともと人形浄瑠璃と文楽は相互に影響を与えつつ発達してきた。現在は文楽で演じられる定番演目から入門編として一部のシーンを切り出して上演している。
 また、淡路人形座は男性だけで演じる文楽とは異なり、太夫、三味線、人形遣いのすべての分野で女性が活躍している。
*2 切り出した例:八百屋お七の悲恋物語として知られている劇中で、お七が火の見櫓に登って半鐘を打つ場面である「伊達娘恋緋鹿子火の見櫓の段(だてむすめこいのひがのこ・ひのみやぐらのだん)」が挙げられる。
*3 淡路人形浄瑠璃資料館:昭和40年代半ばで活動を停止していた淡路人形浄瑠璃の名門「市村六之丞座」の人形や道具など一式をゆずり受け、淡路人形発祥の地(江戸時代の三條村)に1990(平成2)年に開館。淡路人形浄瑠璃に関する人形のかしら・衣裳・小道具など歴史的な資料を展示・保管している。(南あわじ市・市三條880番地 バス停「市」から徒歩12分、市地区公民館の西隣)