六甲山からの夜景ろっこうさんからのやけい

六甲山は神戸市街地の背面に屏風のようにそびえる連山で、南斜面は海岸線から僅か7㎞ほどの距離で標高931mの六甲山頂に達する。そのため山頂エリアからは眼下に広がる神戸市街地から大阪湾、淡路島、瀬戸内海までの雄大な展望が楽しめ、特に市街地の照明と暗い海の広がりの対比として「1000万ドルの夜景*」と呼ばれ、長崎・稲佐山からの夜景、函館・函館山からの夜景と並んで、日本で有数の夜景と評価されてきた。
 六甲山からの夜景は広がりがあるところに特徴があり、神戸・芦屋の市街地の光の絨毯に対する暗い大阪湾・明石海峡と淡路島の島影という明暗の対比に加えて、大阪湾から紀伊半島、瀬戸内海まで水平に展開する遠景により成り立っている。六甲山の代表的な展望台*がいずれも標高約700m~900mの高度にあり、この高度からの視界の広がりと市街地と水面という対比が、他の大都市の夜景ポイントと較べての魅力となっている。
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みどころ

六甲山からの夜景の魅力は、政令指定都市である神戸市の高層ビルやマンションによる光の絨毯のボリュームである。これに加えて阪神高速鉄道の車のテールランプの流れ、明石海峡大橋の光の軸線、製鉄所や石油化学工場等の独特の煌めく照明、波止場のクレーン群の明かりがアクセントとなっている。そして標高が高いことによるパノラマとして大阪湾や瀬戸内海の遠景が縁取りとなっている。
 この夜景を楽しむための幾つかの展望台とその特徴を紹介する。第一は西側の摩耶山、掬星台(きくせいだい)である。摩耶ケーブルと摩耶ロープウェーを乗り継いだ山上の「星の駅」にある展望園地である。標高は他の2箇所よりやや低いが、近景に遮る山地が無く、阪神から明石・加古川までの180°のパノラマを満喫できる。第二は六甲ケーブル山上駅にある六甲山天覧台である。手前に小高い山があるものの、それ以外は遮るものの無いパノラマが堪能できる。掬星台よりもかなり東側にあるので、大阪湾の最深部、天候に恵まれた日は関西国際空港、和歌山方面までの湾曲する海岸線も見えることもある。第三は最も東側に位置し、標高も最も高い六甲ガーデンテラスである。ここは見晴らしのデッキ、見晴らしの塔、特徴的な建築を持つ自然体感展望台六甲枝垂れの3つの展望台があり、神戸・大阪方面の眺望が特徴である。
 これらの展望台はいずれも六甲有馬ロープウェー六甲山頂駅に隣接、あるいはロープウェー駅から頻繁に回っている観光バス(六甲山上バス)でアクセスできるので、ケーブルカーとロープウェーによるアクセスがお薦めだ。
 一方、夜景ドライブの場合は山岳道路沿いに数カ所ある展望所や夜景をセールスポイントとするレストランでゆっくりと時間を過ごすことをお薦めする。
 なお、六甲山からの夜景は標高の高さが特徴である反面、雨や霧による影響が大きいことが課題である。訪問する際は天気予報に留意しておきたい。
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補足情報

*1000万ドルの夜景:1950年代に神戸から始まった宣伝文句が由来と言われている。当時、六甲ケーブルを経営していた六甲摩耶鉄道のキャッチフレーズが高度成長期に旅行会社のパンフレット等で「日本三大夜景:神戸、長崎、函館」と紹介されて有名になった。当初は「100万ドルの夜景」とされており、「100万ドル」は英語で豪華さや派手さを表す慣用句で、外国人の多かった神戸市だからこその発想かも知れない。1953年10月の関西電力広報誌には、神戸市・大阪市・尼崎市・芦屋市の1ヶ月の電気代を試算してドル換算すると100万ドルであるとの当時の副社長中村鼎のコラムが掲載されている。(読売新聞オンライン、朝日新聞デジタル)その後、物価の変動などを受け「1000万ドル」と呼ばれるようになったとされている。