小林一三記念館こばやしいちぞうきねんかん

現在の阪急阪神東宝グループを創業し、関西財界の第一人者でもあった小林一三* (雅号:逸翁)の事績を展示・紹介する。阪急電鉄宝塚線池田駅から北に徒歩約13分、五月山の麓に位置する。小林の住まいだった「雅俗山荘」と展示室「白梅館」のほか、茶室「費隠」、茶室「即庵」などが建つ。「雅俗山荘」は、当初、「逸翁(いつおう)美術館*」として1957(昭和32)年に開館。以降、小林が収集した美術品を公開してきたが、2009(平成21)年に近接地で美術館を新築し、移転。これに伴い、旧・美術館を「小林一三記念館」としてリニューアルオープンした。
 移転オープンした「逸翁美術館」では、小林による個人コレクションを展示する。小林は実業家であるとともに、20歳代から美術品の収集をはじめ、茶会を催すほど茶道を極めるなど、文化・芸術の世界でもその名を知られており、古筆、古経、絵巻、中近世の絵画、日本・中国・朝鮮・オリエント・西洋などの陶磁器、日本・中国の漆芸品を熱心に収集した。こうした個人コレクション約5,500件(書跡・絵画約1,600件、陶磁器約2,500件、その他約1,300件)には、国指定重要文化財16件、重要美術品19件が含まれ、特に与謝蕪村、呉春、円山四条派の絵画コレクションは評価が高い。
 また、「逸翁美術館」に隣接する「池田文庫*」は1949(昭和24)年の開館だが、その歴史は、小林が1915(大正4)年に開設した宝塚新温泉内の図書室にさかのぼり、宝塚歌劇から歌舞伎や映画まで、文芸・演劇関連の貴重な資料を含めた28万冊を超える図書・雑誌を所蔵・公開している。
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みどころ

「雅俗山荘」のほか、茶室「費隠」、茶室「即庵」、長屋門、塀は、国の登録有形文化財である。「白梅館」では主に実業家としての、「雅俗山荘」では茶人、コレクター、著述家としての小林氏の足跡を、豊富な写真や資料などで紹介している。
 「小林一三記念館」のみならず、「逸翁美術館」「池田文庫」も合わせて訪問することで、小林氏の事績や阪急東宝グループの軌跡、さらには収蔵品に対する理解もより深まるだろう。
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補足情報

*小林一三:1873~1957年。阪急電鉄・宝塚歌劇団・東宝など阪急東宝グループの創業者。政界でも商工大臣などで活躍した。逸翁と号して茶を好み、逸翁美術館や小林一三記念館、池田文庫にある茶室は、一般に公開利用されている。
*逸翁美術館:常設展はなく、年に数回開催される企画展や特別展に合わせて展示室がオープンするので、開館日に注意が必要である。展示室のほか、呈茶席としてお茶を楽しめる「即心庵」、1905(明治38)年製「スタインウェイ グランドピアノ」を備える多目的ホール「マグノリアホール」、ミュージアムショップを備える。
*池田文庫:阪急電鉄や宝塚歌劇に関する資料を網羅的に収集する、企業図書館としての側面も持つ。貸出は行っておらず、館内閲覧のみ。
関連リンク 公益財団法人阪急文化財団(WEBサイト)
参考文献 公益財団法人阪急文化財団(WEBサイト)
逸翁美術館(WEBサイト)
小林一三記念館(WEBサイト)

2025年03月現在

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