杉本家住宅・庭園すぎもとけじゅうたく・ていえん

杉本家住宅は地下鉄烏丸線四条駅から徒歩5分、又は阪急京都線烏丸駅から徒歩5分にある。杉本家*は江戸中期に「奈良屋」の名で京呉服の店を出した名家で、堂々たる佇まいの住宅は京町家としては市内最大規模に属する。現在の主屋は禁門の変による大火後、1870(明治3)年に上棟されたもの。間口30m、奥行52mの敷地に建つ主屋は、表通りに面する店の部分と裏の住居部分を玄関でつなぐ職住一体の表屋造りの形式である。京格子、犬矢来(いぬやらい)*、虫籠窓(むしこまど)*といった典型的な京町家の特徴を有し、間口の広さなどに大店としての特色がみられる。主屋の奥側には座敷庭をはさんで3棟の蔵(大蔵・隅蔵・中蔵)が並ぶ。
 座敷庭をはじめ、玄関庭、露地庭、坪庭など敷地内の各所に配された庭は、それぞれに職住一体の機能を有し、接客のための空間ともなっている。
杉本家住宅は2010(平成22)年に国の重要文化財に指定され、2011(平成23)年には、各所に配された庭が「京町家の庭」として国の名勝指定を受けた。
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みどころ

市内に現存する町家として最大規模で保存状態も良好であり、京都の大店の建築遺構として歴史的な価値が極めて高い。また敷地内各所に設けられた庭は機能性を重視するばかりでなく、芸術性に富んだ意匠・造形がみられ建物との調和も素晴らしく、どこを切り取っても絵になる。客人をもてなす座敷に面した座敷庭はもちろんのこと、屋内の通路兼作業場である走り庭まで、すべてにおいて手入れが行き届き美しい。
 期間限定で一般公開されているほか、祇園祭の際には特別公開*が行われ、秘蔵の屏風などがしつらえられる。期間限定で庭を眺めながらオリジナルスイーツなどを楽しめたり、年に数度おくどさんで炊いたご飯を食べる企画も開催される。
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補足情報

*杉本家:1743(寛保3)年、「奈良屋」の屋号をもって烏丸四条下ルに呉服商を創業し、1764(明和元)年、現在地に移った。京呉服を仕入れて関東地方で販売する、いわゆる他国店持京商人として繁栄した。
*犬矢来:京都の町家などにみられる、竹を曲げて設えた覆い。軒下の防護柵のようなもの。
*虫籠窓:表に面した中2階の正面に取り付けられた土格子の窓。
*特別公開:杉本家は祇園祭の山鉾の一つ・伯牙山のお飾り場(屏風祭の会場)となることでも有名。