八幡市立松花堂庭園・美術館やわたしりつしょうかどうていえん・びじゅつかん

京都市の南西、大阪府との境にある八幡市、京阪電車石清水八幡宮駅から京阪バスで約15分「大芝・松花堂前」下車すぐにある。日本庭園、美術館、日本料理店がある複合型の施設である。
 広さ約2万m2の松花堂庭園は、内園と外園で構成される。内園※には、江戸時代初期の石清水八幡宮の社僧で、当代一流の文化人であった松花堂昭乗*が、男山山内の寺坊「泉坊」に隠居後の住居として建てた草庵「松花堂」がある。1900(明治33)年、当地に泉坊の書院の一部とともに移築されたもので、それらを中心に明治時代後半に庭園が整備された。松花堂とその庭(露地)は男山山中の松花堂跡とともに国史跡、また「松花堂及び書院庭園」が国名勝に指定されている。内園の周囲に広がる外園は、四季の風情が楽しめる池泉回遊式庭園。趣の異なる3つの本格的な茶室もある。
 松花堂美術館は松花堂昭乗ゆかりの美術品を集めたもので、春と秋に企画展・特別展を開催するほか、年に3回ほど館蔵品を中心とした展示を行っている。日本料理店は「京都吉兆 松花堂店」が出店しており、当地発祥の松花堂弁当を提供している。
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みどころ

松花堂及び書院庭園は江戸時代後期の遺風を伝えるとともに、風雅を愛でた松花堂昭乗の佗び住まいの境地が感じられる。もともとこの地にあった東車塚古墳を築山に利用しているのも注目される。また庭園全体で40種類以上の竹や約200本のツバキのほか、ウメ、サクラ、アジサイなどがあり、紅葉も美しい。
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補足情報

※草庵「松花堂」・泉坊書院を含む内園は、大阪北部地震の被害とその復旧工事のため、現在は入園不可(特別公開日を除く)。
*松花堂昭乗(しょうかどうしょうじょう):1584~1639。江戸時代初期の石清水八幡宮の社僧で、当時の代表的な文化人。書道、絵画、茶道を得意とし、特に書に優れ「寛永三筆」のひとりに数えられる。農家が種入れとして使っていた器をヒントに、中に十字の仕切りがある器を作り、絵具箱や煙草盆として使用していた。この四つ切の器に料理を盛り付け「松花堂弁当」としたのが、有名な料亭「吉兆」の創業者・湯木貞一。湯木は1933(昭和8)年、松花堂を訪れた際、昭乗の好んだ四つ切箱を見初め、料理の器にすることを思いついたという。