壬生大念佛狂言みぶだいねんぶつきょうげん

壬生大念佛狂言は、壬生寺*で毎年3回(2月の節分とその前日の2日間、4月29日~5月5日の7日間、10月のスポーツの日を含む連休の3日間)行われる無言劇。一般に壬生狂言と呼ばれ、太鼓や鉦の音から「壬生さんのカンデンデン」と親しまれる。約700年の歴史があり、国の重要無形民俗文化財に指定されている。壬生寺へは阪急「大宮駅」または嵐電「四条大宮駅」から徒歩10分。
 京都で現在も演じられている4つの大念佛狂言*の一つ。鎌倉時代に壬生寺を中興した円覚上人が、大念佛法会の際、だれにもわかるよう身振り手振りで仏の教えを説いたのが始まりとされる。近世には庶民の娯楽としても発展し、本来の仏教劇だけでなく、能や物語などから題材をとった演目も演じられるようになった。現在は能楽系・狂言系・壬生狂言独自の3系統、計30演目がある。一般の能狂言と異なり、せりふを一切用いないのが特徴で、白布で頭を包み仮面を着けた演者が、鉦や太鼓、笛のはやしに合わせ、パントマイム的に演じる。
 舞台となるのは、境内の大念仏堂(狂言堂)。幕末の再建ながら、綱渡り芸をするための「獣台」、鬼などが飛び込んで消える「飛び込み」などの装置を備えた特異な建築で、国の重要文化財に指定されている。
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みどころ

壬生狂言は地元の人たちでつくる「壬生大念仏講」によって継承、演じられている。現在の30演目のうち、「桶取」は壬生狂言の最も重要な曲とされており、糸をまき散らす場面が見せ場の「土蜘蛛」も代表演目。ほかに壬生寺本尊の地蔵菩薩の慈悲深さを表す「賽の河原」、綱渡りなど壬生狂言独特のアクションを盛り込んだ「蟹殿」など多彩な演目がある。
 年3回の公演中、春の「壬生大念佛会」の公演が本来のもので、秋は特別公開という位置づけ。春と秋の公演では毎日最初に有名な「炮烙割(ほうらくわり)」を上演。約1000枚の炮烙(素焼きの皿)を、高さ3mの舞台から次々に落として割るのが見せ場となっている。炮烙は2月の節分会に奉納されたもの。割ることで厄除けになるという。この炮烙割を含め、春と秋は30演目の中から1日5~6番が演じられる。2月の公演は節分会に合わせて行われ、30演目中の「節分」だけを1日4回繰り返し上演する。春と秋は観覧有料、2月は無料。
 壬生狂言とともに壬生寺でよく知られるのは、新選組との関わり。幕末、寺の境内は新選組の兵法訓練場として使われており、隊士たちは訓練の合間に壬生狂言も楽しんだと伝わる。現在、境内の壬生塚には、新選組隊士の墓、近藤勇や土方歳三の胸像などがある。また寺の北隣の八木邸は、新選組の屯所跡。隊士たちが寝起きした屋敷が当時のまま残っており、見学できる(有料)。その隣には同じく屯所だった旧前川邸(非公開)もある。
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補足情報

*壬生寺:律宗の寺院。991(正暦2)年、園城寺(三井寺)の快賢が創建し、鎌倉時代に円覚上人が中興したと伝わる。本尊の地蔵菩薩は古来、厄除け、延命の信仰を集める。1962(昭和37)年に本堂を全焼しており、現在の本尊の地蔵菩薩立像(国の重要文化財)は律宗総本山の奈良・唐招提寺から移したもので、本堂は1970(昭和45)年の再建。阿弥陀堂は歴史資料室を併設しており、寺宝や新選組の関連資料、壬生狂言の面などを展示する。
*京都の大念佛狂言:壬生寺のほか、上京区の千本ゑんま堂(引接寺)、右京区の清凉寺(嵯峨釈迦堂)、中京区の神泉苑に伝わる。
関連リンク 壬生寺(WEBサイト)
参考文献 壬生寺(WEBサイト)
「京都府の歴史散歩 上」山川出版社

2025年05月現在

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