田原の御田たわらのおんだ

「田原の御田」は毎年5月3日に、南丹市日吉町田原の多治(たじ)神社で営まれる民俗芸能。籾の準備から刈り取りまで1年間の稲作の過程を模擬的に演じ、その年の豊作を祈願する。同様の「お田植え」神事は全国各地でみられるが、一連の稲作作業を一貫して表現するのは非常に珍しく、国の重要無形民俗文化財に指定されている。多治神社へはJR山陰本線日吉駅から南丹市営バスで田原下車、徒歩5分。
 行事は氏子男性2人が演じる「作太郎」「作次郎」が中心となって狂言風に行われる。田植えは早乙女役の女の子4人が演じ、男の子が扮した田すきをする牛も登場。また10人ほどの男衆が田植え歌を歌う。
 多治神社は社伝によれば8世紀の創建。同社に残る記録によると、田原地区では14世紀ごろに多治神社を中心に宮座が組織され、この御田も宮座によって行われてきた。また、多治神社では毎年10月中旬に京都府無形民俗文化財に指定されている「カッコスリ」という民俗芸能が行われる。
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みどころ

「苗代作り」「種まき」「牛買い」「田すき」「田植え」「見回り」「刈り入れ」など稲作にまつる15の次第が演じられる。作太郎と作次郎によるアドリブを交えたセリフのやりとり、軽妙な所作がおもしろく、地元の子どもたちが演じる早乙女や牛はかわいらしい。田植え歌は中世歌謡の雰囲気を残している。1時間にわたって続くが見る者を飽きさせず、楽しめる民俗芸能といえる。