高山寺こうさんじ

京都市の北西郊、愛宕山の東麓に位置する高雄(高尾)・槇尾・栂尾(とがのお)は「三尾(さんび)」と総称され、古来、紅葉の名勝として知られてきた。高山寺はその三尾の最も北、栂尾にある世界遺産の古刹である。京都駅からだとJRバスで約1時間、栂ノ尾下車、徒歩5分。
 774(宝亀5)年、光仁天皇の勅願で開創。1206(建永元)年、明恵上人*が後鳥羽上皇からこの地を与えられて再興し、高山寺と号した。その後、兵火などに遭い、鎌倉時代の建物は石水院*(国宝)を残すのみだが、「鳥獣人物戯画*」(国宝)、「明恵上人樹上坐禅像」(国宝)をはじめ、文化財に指定された多数の美術工芸品を所蔵する。
 老杉やカエデに覆われた境内には、明恵上人の住坊とされる石水院のほかに、1634(寛永11)年に仁和寺から移築された金堂、明恵上人坐像(重文)が安置される開山堂などが立つ。また、境内に茶畑があり、「日本最古之茶園」の碑が立つ。栄西禅師が中国から持ち帰った茶種を、明恵上人がここに植えたのが始まりとされ、のちにこれを宇治に分けたのが宇治茶の起源という。
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みどころ

栂ノ尾バス停や駐車場から境内へは、急な坂道の裏参道を登るのが近いが、少し南へ戻ればなだらかな坂道の表参道がある。裏参道を登り切ると右手に石水院があり、書院、開山堂、明恵上人御廟などが続く。御廟の一角に立つ宝篋印塔・如法経塔はいずれも重要文化財。さらに進むと金堂がある。
 境内は紅葉の名所として知られ、例年11月上旬~中旬が見頃。気温が低い山間部にあるため、市街地の名所より早めに色づく。石水院の廂(ひさし)の間から眺める紅葉、正方形の石畳が並んだ表参道の紅葉は、とりわけ見ごたえがある。
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補足情報

*明恵上人:1173~1232。鎌倉時代前期の僧。紀伊国生まれ。神護寺、東大寺に学んだ。奈良・平安時代の旧仏教の復興に努め、特に華厳宗を中興し、浄土宗など新仏教に対抗した。
*石水院:後鳥羽上皇の学問所を賜ったもので、明恵上人の住房であったとされる。鎌倉時代初期の寝殿造風の貴重な遺構で、国宝に指定されている。建物内で、鳥獣人物戯画の複製(実物は東京国立博物館に寄託)、明恵上人樹上坐禅像の複製を拝観できる(実物は京都国立博物館に寄託)。
*鳥獣人物戯画:甲乙丙丁の4巻からなり、兎、蛙、猿などの動物を擬人化した甲巻が有名。日本の漫画の原点といわれる。平安後期から鎌倉時代の作。
関連リンク 高山寺(WEBサイト)
参考文献 高山寺(WEBサイト)
「京都府の歴史散歩 上」山川出版社

2025年05月現在

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