永観堂(禅林寺)えいかんどう(ぜんりんじ)

地下鉄東西線蹴上駅下車、徒歩15分。市バス南禅寺・永観堂道下車、徒歩3分。正式には禅林寺というが永観堂の名で親しまれている。広い境内には、山を負うように諸堂が並び、方丈(釈迦堂)・勅使門(唐門)・鐘楼・御廟・中門・多宝塔・阿弥陀堂(本堂)*など多くの建物は、臥龍廊*とよばれる回廊で結ばれている。
 寺は、平安時代初期の853(仁寿3)年、弘法大師の弟子・真紹(しんじょう)が藤原関雄の山荘を譲り受け、真言密教の道場としたことに始まる。863(貞観5)年、定額寺*となって禅林寺の名を賜り、その後は朝廷の庇護を受けたが、火災により堂宇を焼失。承暦年間(1077~1081)に永観律師が入寺して、浄土念仏の道場として中興した。このことから永観堂といわれるようになった。本尊の阿弥陀如来立像*は永観の念仏修行の先導をし、振り返った姿を写したものといわれ、「みかえり阿弥陀*」として知られる。境内にはカエデが多く、11月中~下旬の紅葉はみごとで、「岩垣もみじ*」といわれ、京都を代表する紅葉の名所である。
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みどころ

永観堂のカエデ(新緑と紅葉)は、古来より楓樹千林の適地としてその名を知られ、古今集の下、後拾遺集などに詠まれている。11月上旬から12月上旬の約1か月の紅葉の期間、夜間のライトアップで、全山、真っ赤に染め上げられる。臥龍廊を歩き、樹木から発するフィトンチッドを浴びながら、樹木越しに見え隠れする境内の諸堂などを楽しんでほしい。
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補足情報

*阿弥陀堂(本堂):1607(慶長12)年に大阪・四天王寺の曼荼羅堂を移築したもの。堂内は極彩色に塗られ、格天井には「百花」が描かれている。
*臥龍廊:山の斜面に建てられた諸堂を結ぶ階段回廊。山腹にうねるように続く。
*定額寺:じょうがくじと読む。平安時代、朝廷が特に数を限り官寺に準じて制定した寺。私寺の乱造を防ぎ統制を強めるために制定したもの。
*阿弥陀如来立像:重要文化財。室町時代の作と伝え、本堂に安置されている80cmほどの小さな立像で、洛陽六阿弥陀仏の一つである。洛陽六阿弥陀は、1番真正極楽寺(東山)、2番禅林寺(東山)、3番清水寺阿弥陀堂(東山)、4番安祥院(東山)、5番安養寺(洛中)、6番誓願寺(洛中)。
*みかえり阿弥陀:永観律師が念仏を唱えていると、本尊の如来像が永観の先に立ち、ともに念仏行道をし、その不思議さにたたずんだ永観をみて「永観遅し」と見返ったという伝説がある。
*岩垣もみじ:古今和歌集にある藤原関雄の「奥山の 岩垣紅葉 散りぬべし 照る日の光 見る時なくて」から。
関連リンク 永観堂禅林寺(WEBサイト)
参考文献 永観堂禅林寺(WEBサイト)
「京都府の歴史散歩 中」山川出版社
「永観堂 禅林寺」永観堂制作のパンフレット

2025年05月現在

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