長命寺ちょうめいじ

琵琶湖に臨む長命寺山(標高333m)の8合目(250m)に建てられ、西国三十三所観音霊場*の第31番札所で、健康長寿を祈願する多くの参拝者で賑わう。
 寺伝によれば、3世紀後半から4世紀初頭の第12代景行(けいこう)天皇の時代に、大臣の武内宿禰(たけのうちのすくね)が、この山で柳の巨木に「寿命長遠所願成就(じゅみょうちょうおんしょがんじょうじゅ)」と記し祈願。その後聖徳太子が諸国歴訪の折に訪れて、文字が記された柳の木で千手十一聖観音三尊一体の像を刻み、伽藍を建立して安置。宿禰の長寿霊験にあやかり、長命寺と名付けたとされる。後に、源頼朝が近江守護佐々木定綱に命じ諸堂を整備させ、以後佐々木氏の尊崇を得て栄えた。
 参道の808段の石段を登ると、本堂、三重塔、鐘楼、護摩堂(共に国の重要文化財)などの諸堂が連なる。現在の伽藍は、1516(永正13)年の兵火により堂塔が焼亡した後に再建されたもの。境内からは雄大な琵琶湖が望める。
#

みどころ

本堂は、7間の正面を崖に向け、側面は6間で木割太く、入母屋(いりもや)造・檜皮葺きである。1524(大永4)年に再建された。三重塔は、方3間、柿葺、朱塗。擬宝珠(ぎぼし)に1597(慶長2)年の刻銘。隣に宝形の朱塗りの護摩堂(1606年建立)がある。
 本堂西の三仏堂(さんぶつどう)を背にして前方を見ると、「この先崖」と示され、『明治45年』と刻まれた石柵の向こうには、大きく伸びた杉の木の間から近江の母なる琵琶湖が見え、遠くには三上山を背に湖東平野や比良山系などを望み、近江八幡の水郷風景が広がっている。
 大正時代から第三高等学校(現京都大学)の寮歌としても歌い継がれている『琵琶湖周航の歌*』の6番には、「西国十番 長命寺 汚(けが)れの現世(うつしよ)遠く去りて 黄金(こがね)の波に いざ漕(こ)がん 語れ我が友 熱き心」とある。
 参道入口前の自家製餅入り長命うどん・そばが名物で、琵琶湖で獲れた魚を使った佃煮もある。
#

補足情報

*西国三十三所観音霊場:近畿2府4県と岐阜県に点在する33か所の観音信仰霊場の総称。文化庁の日本遺産に認定されている。
*琵琶湖周航の歌:1917(大正6)年、京都にある旧制の第三高等学校水上部(現在の京都大学ボート部)の学生が、琵琶湖でボートを漕ぎながら詩を作り、高島市今津町の宿で歌い誕生した。1971(昭和46)年に加藤登紀子が歌ってヒットし、有名になった。
関連リンク 滋賀・びわ湖 観光情報(公益社団法人びわこビジターズビューロー)(WEBサイト)
参考文献 滋賀・びわ湖 観光情報(公益社団法人びわこビジターズビューロー)(WEBサイト)
「滋賀県の歴史散歩」滋賀県歴史散歩編集委員会 山川出版社
「西国三十三所めぐり」関西札所めぐりの会  メイツ出版
「西国三十三所めぐり(旅行ガイド)」昭文社 旅行ガイドブック 編集部 昭文社

2025年04月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。