山王祭(日吉大社 )さんのうさい(ひよしたいしゃ)

山王さんといわれる日吉大社の例祭で、湖国三大祭*の1つ。791 (延歴10)年、桓武天皇により日吉社に2基の神輿が寄進されて以来、1200年以上の歴史を有する祭りで、西本宮 大己貴神(おおなむちのかみ)・東本宮 大山咋神(おおやまくいのかみ)の鎮座の由来をたどりながら、天下泰平・五穀豊穣を祈る。祭礼中、山王七社の7基の神輿(1基1500kg)が登場し、桜満開の中、勇壮な神事が行われる。
 毎年3月の第1日曜に始まり、中心行事が終わる4月14日まで長期間にわたる。最大のみものは4月12~14日の神事である。12日夜の午の神事は、東本宮の祭神 大山咋神と鴨玉依姫(かもたまよりひめ)神の結婚を再現する儀式。大山咋神と鴨玉依姫神が神体山から山麓に移された故事にならい、3月初めに八王子山山頂へ担ぎ上げられた2基の神輿が、4月12日夜、山頂の社から駕輿丁(かよちょう)と呼ばれる白襦袢の若い担ぎ手らにより、暗闇の中、松明の火だけを頼りに急坂を一気に下る。その後、東本宮拝殿でこの2基の神輿は交合の神事を行う。結婚である。
 13日午後の花渡り式は、祭りのなかでもっとも華やかな神事で、甲冑姿の5歳くらいの稚児行列が献花とともに日吉馬場を西本宮へ向かい、その夜に出産を迎える神様にお祝いの花を添える儀式。夜は宵宮場で宵宮落とし神事が行われ、これは大山咋神と鴨玉依姫神による出産、若宮誕生の儀式。前夜婚儀をあげた大山咋神と鴨玉依姫神から若宮が誕生する様子を再現しており、駕輿丁の若い担ぎ手が4基の神輿を激しく揺すり大きな音が響き渡るが、それは神様の陣痛を表すともいわれる。同時に、神の陣痛を人目から守るため神輿の前に並び立つなか、甲冑姿の武者の走り込みがあり、その後、4基の神輿は一斉に1m以上の高さから地上に向かって落とされ、若宮の出産となってクライマックスを迎える。これは、「けんか祭」の異名があるように最も力のこもったもので、東本宮四社の神輿を激しく振り落とす勇壮な神輿振りが展開され、京都上賀茂神社の賀茂別雷(かもわけいかづち)神をお産する様を表現したものである。その後、行列を整えて西本宮拝殿に進む。
 翌14日の例祭は、西本宮で行われる日吉大社年間最大の神事で、7基の山王神輿の前で厳粛な神事が執り行われる。天台宗総本山比叡山延暦寺天台座主による般若心経の読経などの後、午後2時30分から神輿渡御が行われ、7基の神輿を御座船にのせ琵琶湖を渡る。琵琶湖上で粟津御供(あわづのごく)と呼ばれる供え物が膳所の5つの神社から奉献される。夕方、7基の神輿は大社へ還り、15日は酉の神事をして祭りをとじる。
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みどころ

「けんか祭」の異名があるほど激しいまつりである。しかし祭りの流れをみると、動と静をうまく組み合わせている。すなわち、2基の神輿を一気に暗闇の中、松明の火を頼りに急坂を下る(動)と、そのあとは花渡り式。華やかな、甲冑姿の5歳くらいの稚児の行列(静)、ふたたび4基の神輿を一斉に1m以上の高さから地上に落す(動)、最後は7基の神輿が琵琶湖上を渡る。その様子は華麗な歴史絵巻を見るような華やかさ(静)である。見事な演出である。
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補足情報

*湖国三大祭り:山王祭、大津祭、長浜曳山祭
関連リンク 山王総本宮 日吉大社(WEBサイト)
参考文献 山王総本宮 日吉大社(WEBサイト)
滋賀・びわ湖 観光情報(公益社団法人びわこビジターズビューロー)(WEBサイト)
BIWAKO OTSU TRAVEL GUIDE(公益社団法人びわ湖大津観光協会)(WEBサイト)
『滋賀県の歴史散歩 上』滋賀県歴史散歩編集委員会 山川出版社

2025年04月現在

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