長岡のゲンジボタルながおかのげんじぼたる

JR近江長岡駅前、天野川(あまのがわ)にかかる長岡橋一帯に発生する。6月の全盛期には無数のゲンジボタル*が飛び交い、夏の訪れを告げる。例年その時期に合わせ、地元住民の手づくりイベント「天の川ほたるまつり」を開催し、子ども達手づくりの行灯により道標や観賞の案内所などが設置され、多くの観賞者で賑わう。
 長岡地域一帯は「長岡のゲンジボタルおよびその発生地」として、1952年(昭和27年)に国の特別天然記念物に指定された。ホタル発生地として天然記念物指定を受けているところは全国でいくつかあるが、「天然記念物のうち特に重要なもの」として、長岡のゲンジボタルは全国で唯一「特別天然記念物」に指定されている。
 米原市では他に近江地区の「息長(おきなが)ゲンジボタル発生地」が国の天然記念物に指定されている。
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みどころ

天野川は、鈴鹿山脈の最北にある霊仙山(りょうぜんざん)を源として、北の伊吹山からの弥高川らと合流して琵琶湖にそそぐ。水源の二つの山は石灰岩質でできていて、溶け出したカルシウム質を含んだ水により、ホタルの幼虫の餌となるカワニナがよく育ち、水草もよく繁茂し、ホタルの生育に最適である。この地の「ゲンジボタル」は、発育が良好で成虫の体長が、約2センチメートルにもなる大型のもので、6月の発生最盛期には、多くのホタルが飛び交い、幻想的なホタルの乱舞が見られる。
 かつて大正時代(1912~1926)には、川面が明るくなるほどホタルが群舞した。しかし、1955(昭和30)年代は工場排水や農薬の影響、1959(昭和34)年の伊勢湾台風による川の氾濫、1964(昭和39)年の河川復旧改良工事による護岸や河床の変化などにより、 ホタルは絶滅寸前の危機に陥った。こうした状況から、「天野川ゲンジボタルを守る会」を中心とする運動が起こる。
 一方、1969(昭和44)年には「飼育池」が造られて増殖への取り組みが始まり、1972(昭和47)年に当時の山東町が、ホタル捕獲を禁止する「山東町蛍保護条例」を制定した。その結果、1975(昭和50)年頃から美しい光景が蘇ってきた。
 2005(平成17)年の米原市との合併後もホタル保護の歩みは引き継がれ、2008(平成20)年には「米原市蛍保護条例」を制定するなど、今日も生態研究と保護の取り組みが続けられている。
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補足情報

*ゲンジホタル:鞘翅目ホタル科。12~18mmと日本最大で、一般にホタルと呼ばれるもの。卵から成虫になるまでに約1年かかり、生涯の大部分を水中で生活する。成虫になってからの寿命は約1、2週間と短い。成虫の特長は、複眼が丸くて大きく、体色は黒色、前胸部の左右がピンク色。中央に十字架形の黒い模様があり、尾部には淡い黄緑色の発光器官がある。
関連リンク 米原市(WEBサイト)
参考文献 米原市(WEBサイト)
長浜・米原を楽しむ(公益社団法人長浜観光協会)(WEBサイト)
「ホタルパンフレット」米原市
「米原市自然研究の歩み」口分田 政博 サンライズ出版
「本当はスゴイ!滋賀の文化財」滋賀県文化財保護課 サンライズ出版

2025年04月現在

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