三重県立熊野古道センターみえけんりつくまのこどうせんたー

JR尾鷲駅からバスで約20分。2004(平成16)年7月、三つの霊場とそれらを結ぶ参詣道*が「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録された。道(巡礼の道*)の世界遺産は世界でも珍しく、この地では、自然崇拝に根ざした神道、中国から伝来し日本で独自の展開を見せた仏教、その両者が結びついた修験道など信仰の多様な形態が育まれてきた。三つの霊場とは「熊野三山」「高野山」「吉野・大峯」であるが、「熊野三山」と日本人にとって特別な場所である「伊勢神宮」の二大聖地を結ぶ「祈りの道」が「熊野古道 伊勢路」である。
 三重県立熊野古道センターは、この二大聖地の中間に位置する尾鷲市に2007(平成19)年2月10日オープンした県営施設であり、熊野古道 伊勢路や周辺地域の情報を提供し、地域の人々との交流、ひいては地域の振興を図るために建設した施設である。東紀州地域の特色を生かした展示や体験学習教室、講座・講演会、音楽会、イベントなどの活動のほか、交流促進のための料理教室や水彩画教室、古道ウォークなど幅広い活動を展開している。
 本施設の運営は指定管理方式によって行われており、現在の指定管理業者は、特定非営利活動法人 熊野古道自然・歴史・文化ネットワークとなっている。
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みどころ

本施設の特徴は、その建築にある。具体的には、熊野古道にふさわしい「木造の建物」とするため、尾鷲ヒノキ・熊野杉という地場産の材料を市場に流通する規格(135mm同一断面の芯持ち無垢材)のまま使用したことであり、60~80年生の尾鷲ヒノキ6549本を使用して建設されている。
 もう一点は、「木材のトレーサビリティ」という概念を導入していることである。トレーサビリティは、Trace(追跡)+ability(可能)という意味で、食の分野で確立されたシステムであるが、木材にもトレーサビリティの概念は存在する。本施設の交流棟中央にある組壁には、トレーサビリティの証として、建設に使われた木々が育てられた産地名が記されている。
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補足情報

※参詣道:以下のような「紀伊山地の参詣道ルール」が定められている。
一. 「人類の遺産」をみんなで守ります
紀伊山地の自然や文化にふれ、学び、私たち共有の資産の素晴しさを、みんなの力で末永く後世へ伝えましょう。
ニ. いにしえからの祈りの心をたどります
この道には、祈りを捧げてきた多くの足跡が刻まれています。今なお続く人々の心に思いを馳せながら歩きましょう。
三. 笑顔であいさつ、心のふれあいを深めます
出会った人と声をかけあい、また地域の人々とも交流を図りましょう。
四. 動植物をとらず、持ち込まず、大切にします
貴重な動植物が生息する紀伊山地では、存在するもの全てが大切な資産です。自然を愛し、守る心を持ち続けましょう。
五. 計画と装備を万全に、ゆとりを持って歩きます
道中は何が起こるかわかりません。中には険しい道もあるので、天候・体調・装備などを十分に考えて、無理をせず歩きましょう。
六. 道からはずれないようにします
道をはずれることは危険であり、植生などを傷めることにもなります。むやみに周囲に踏み込まないようにしましょう。
七. 火の用心をこころがけます
タバコのポイ捨てなど、ちょっとした不注意から火災は起こります。火気の取り扱いは十分注意しましょう。
八. ゴミを持ち帰り、きれいな道にします
地域の人たちが古くから守りつづけてきた道です。ゴミを持ち帰り、来た時よりも美しい道にしましょう。

※巡礼の道:フランスからバスク地方を通り、カトリックの三大聖地である「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」を目指す道は「サンティアゴ巡礼道(路)」と呼ばれ、1993(平成5)年に世界文化遺産に登録された。世界文化遺産に登録されている「道」は「サンティアゴ巡礼道」と「熊野古道」の2つのみであることから、三重県とスペイン・バスク自治州は「世界遺産の巡礼道を活かした協力・連携に関する覚書」を締結し交流を行っている。