伊勢河崎のまちなみいせかわさきのまちなみ

JR・近鉄「伊勢市駅」、近鉄「宇治山田駅」から徒歩約15分。伊勢の河崎は、伊勢市の中心を流れる勢田川の両側に広がる町で、水運を生かした問屋街として知られ、特に江戸時代からは伊勢神宮の参宮客への物資を供給する「伊勢の台所」として栄えた。当時は蔵や町家が川の両岸に建ち並び、直接船から物資を蔵に入れることができるようになっていたが、今でもその名残を残した建物も少なくない。勢田川左岸側の河崎本通りには、今も江戸時代からの「切妻妻入り」の狭い間口で奥行きのある店舗や蔵が連なる町並みが残されている。近年、蔵をカフェや居酒屋、ギャラリーなどにリニューアルし、洒落た店舗が整備され、人気を博している。
 河崎のまちづくりの拠点施設である「伊勢河崎商人館」は、江戸時代から300年以上続いてきた酒問屋(元小川酒店)を活用したもので、NPO法人伊勢河崎まちづくり衆によって運営管理されている。
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みどころ

1974(昭和49)年7月に伊勢をおそった集中豪雨により、勢田川の河川改修計画が持ち上がり、川幅を広げるため蔵や町家が取り壊されることとなった。貴重な建物を守るために反対運動がおこり、同時に歴史的景観を守ろうと町並み保存運動が展開されたが、結果的には多くの古い蔵や町家がなくなってしまった。
 そうした反省に基づき1979(昭和54)年には「伊勢河崎の歴史と文化を育てる会」が創設され、土蔵を活用して開館した「河崎まちなみ館」を中心に、河崎の歴史や文化の継承、町並みの保存活動が進められることとなった。1996(平成8)年には河崎の蔵を保存活用する団体として「伊勢河崎・蔵バンクの会」が結成され、1997(平成9)年の「伊勢市都市マスタープラン」の策定などを通じて、河崎を「歴史文化交流拠点」として位置づけ、その後の歴史文化を活かしたまちづくりへと発展していった。こうした地道な活動によって、空き家になっていた土蔵や町家が飲食店や美容室、ギャラリーなどに再生されるようになり、歴史的な建物が数多く保存活用されることとなった。
 こうしたまちづくりの延長線上に今の伊勢河崎の観光が成立していることを学ばなければならない。