花窟神社はなのいわやじんじゃ

JR熊野市駅から新宮駅行きバスで約4分。花窟神社(花の窟神社)は、伊弉冊尊(いざなみのみこと)と軻遇突智尊(かぐつちのみこと)を祀る神社である。『日本書紀』巻一*に登場する、伊弉冊尊(いざなみのみこと)を葬った紀伊国熊野の有馬村とはこの花の窟だといわれる。今日に至るまで社殿はなく、熊野灘に面した高さ約45mの巨岩である磐座(いわくら)が御神体である。巨岩の根方に祭壇を設け、白石を敷きつめ、玉垣をめぐらして拝所とした太古の自然崇拝(巨岩信仰・磐座信仰)の姿を今に残す神社である。
 年2回、2月と10月に「御縄掛け神事*」と言われる例大祭が行われる。神々に舞を奉納し、約170メートルの大綱を高さ45メートル程の御神体から境内南隅の松の御神木に渡すもので、三重県の無形民俗文化財に指定されている。
 2004(平成16)年、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部(熊野参詣道伊勢路の一部)として登録された。
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みどころ

2013年(平成25)年の高速道路開通を見越し、「特定非営利活動法人 有馬の村」を中心として、神社正面に「お綱茶屋」という熊野の特産品販売所が2012(平成24)年4月に整備された。花の窟にちなんだ商品の販売や食の提供を行う施設、花の窟の歴史・由緒を伝えるための資料館などで構成されている。観光消費の場や休憩する場がなかった当地において、地域への経済波及効果を狙った有意義な施設整備といえる。
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補足情報

*『日本書紀』巻一:「伊奘冊尊、火神(ほのかみ)を生む時に、灼かれて神退去(かんさり)ましぬ。かれ紀伊国熊野の有馬の村に葬(かく)しまつる。土俗(くにひと)此の神の魂を祭るには、花の時には花を以て祭る、又鼓吹幡旗(ふえはた)を用(も)て歌い舞うて祭る。」
*御縄掛け神事:むかしは朝廷より納められた錦旗で祭っていたが、ある年、船が難破して旗が届かず、荒縄を編んで旗を作ったという。窟の上から下ろした縄に、扇などをつけた旗を結び、縄の一方の端を窟前の松の木に結びつける。この御綱渡しの神事が終り、縄旗と花が飾られると例大祭が始まる。