八橋かきつばた園やつはしかきつばたえん

名鉄三河八橋駅南西、徒歩8分。無量壽寺境内などにある。以前この地を流れる逢妻川流域の低湿地一帯にカキツバタが咲き、古くから多くの歌人に親しまれ、詠まれてきた名所である。また幾筋にも分かれた川の流れに八つの橋が架けられていたところから八橋*と呼ばれたと伝わる。この地で詠まれたのが有名な在原業平の歌*である。
 1805(文化2)年、旅の僧、方巌売茶翁(ほうがんばいさおう)がこの地を訪れた時、寺は荒れ、野のカキツバタは見る影もない状態であった。寺の住職となった翁は、境内の池や庭を改造し、一の段から四の段に4つの池を配置し生垣で区切ることで、人の影を見ることなくカキツバタ池を巡る回遊式庭園にした。
 現在は、敷地11,130m2の庭園内にカキツバタ3万本が植えられており、16の池一面に咲きそろう4月~5月が見どころで多くの人を魅了している。庭園は煎茶式庭園*の遺構をよく残しており、高い評価を得ている。境内には八橋史跡保存館*がある。
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みどころ

「業平塚」「在原寺」「根上がりの松」など季節を問わず訪れる価値のあるところだが、特に「史跡八橋かきつばたまつり」(4月下旬から5月中旬)のころに訪れると、カキツバタが清楚な青紫色を見せてくれる。カキツバタは日本古来の植物で、愛知県と知立市の花でもある。
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補足情報

*八橋:『伊勢物語』の一節に「三河の国、八橋といふ所にいたりぬ。ここを八橋といひけるは、水ゆく河の蜘蛛手なれば、橋を八つ渡せるによりてなむ、八橋といひける。」とある。
*在原業平の歌:『伊勢物語』の中で、かきつばたの5文字を入れて詠んだ、「からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ」という歌である。無量壽寺から南に150m、最初の信号を右折し約650m進んだところに業平塚があり、逢妻川を渡った先にある落田中の一松(業平が歌を詠んだとされる場所)など付近一帯が愛知県指定文化財「八橋伝説地」とされる。
*煎茶式庭園:方巌売茶翁は、煎茶の奥義をきわめた人で、遠くの村積山(三河富士)や近くの逢妻川を借景とし、煎茶を青空の下で楽しむ玉川卓を設けるなど特徴ある庭園形式を取り込んだ。
*八橋史跡保存館:在原業平ゆかりの史跡や方巌売茶翁の茶道具と笈、尾形光琳作の国宝燕子花図屏風(複製)など見応えある文化財が展示されている。4月から6月まで開館。
関連リンク 知立市(WEBサイト)
関連図書 伊勢物語
参考文献 知立市(WEBサイト)
あいち観光ナビ(一般社団法人 愛知県観光協会)(WEBサイト)
『愛知県の歴史散歩 下』愛知県高等学校郷土史研究会=編 山川出版社

2024年05月現在

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