御油のマツ並木ごゆのまつなみき

豊川市御油と赤坂の中間、国道1号と並行する旧東海道の両側に、600mにわたって約350本のクロマツの並木が残っている。旧東海道に現存する松並木の代表的なもので、『東海道中膝栗毛』にも登場し、弥次さん喜多さんが化け狐をめぐって丁々発止のやりとりを繰り広げたその場所である。
 御油のマツ並木は、1604(慶長9)年、家康の命により植えられたとされる。1752年(宝暦2)年と1863(文久3)年の記録では、全体で650本前後の松がある。松並木は、江戸時代は、幕府の手厚い保護と監視の下で、そして明治以降は、地域住民による自発的な管理で守られてきている。
 御油駅近くに松並木に関する資料館*がある。
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みどころ

東海道を往来する旅人にとって、この立派な松並木は、夏には暑さをしのぐ木陰を作り、冬には冷たい北風や雪を防ぐなど、旅の苦労をやわらげ、旅に風情をそえた。五十三次の主要な宿場であった御油・赤坂の町は、今日でも連子格子の家並みなどが残り、江戸のむかしを偲ばせる。
 松並木は、第二次世界大戦が激しくなると危機的状況を迎えた。各地のマツは木造船の材料や燃料にするため切り倒されたが、1944(昭和19)年に国の天然記念物に指定され、御油のマツは1本も切られることはなかった。
 1970(昭和45)年前後からの乗用車など車の普及で、交通量の増加や道路の舗装などが進み、松並木が衰えた地域も散見されたことから、時の連区長を中心として、消滅しつつある古き良き文化財を護り抜くことを有志に呼びかけ、1972(昭和47)年に御油松並木愛護会が結成された。松並木の保存に取り組んだおかげで、いまも江戸時代の並木景観が保たれている。
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補足情報

*御油の松並木資料館:展示室中央には、江戸時代の御油宿と松並木を中心に国府から赤坂までの街道とその周辺を復元したジオラマがある。屋外展示場に据えられた松の根と幹は、松並木を整備した当初に植えられた樹齢380年のものである。