日間賀島のたことふぐの料理ひまかじまのたことふぐのりょうり

日間賀島は知多半島の師崎港から2.4km、高速船でわずか10分、0.77km2の小さな島。ここに599世帯、1,686人が生活する(令和6年2月末現在:南知多町)。かつては半農半漁であったが、いまは漁業と観光の島である。登録漁船は550隻で、愛知県で漁業が最も盛んな地域である。タコ、なまこ、シラス、貝、ノリ、そしてフグなどが水揚げされる。
1960(昭和35)年頃、水道が漁協によって整備され、民宿事業が可能になる。1988(昭和63)年からタコ料理を始め、フグ料理は1990(平成2)年頃から取り組むが、フグ目的の客が増えたのは5年後である。現在、多幸(タコ)の島、福(フク)の島として売り出している。
 1年中味わうことができる名物のタコ料理は、ごく自然に島の料理として提供してきたが、フグ料理がいま見るように名物料理になるには、そう簡単ではなかった。トラフグ漁の歴史は100年以上といわれ、ふぐを一匹ずつ傷つけないように延縄漁で釣り上げる。収穫量も、2003(平成15)年には国内のトラフグの漁獲量の約22%の水揚げで、全国一である。にもかかわらず、フグ料理に取り組みだしてまだ30年くらいである。名古屋を中心にした中京圏ではフグを食べる文化が無かったため、トラフグを鳥羽で水揚げをして、消費の多い大阪・下関へ出荷していた。転機は1989(平成元)年。玄界灘など九州地方でトラフグが不漁になった。熊野灘から遠州灘にかけては豊漁で、下関からトラックが島の魚市場に殺到した。ふぐ産地の日間賀島の名が一躍高まった。ふぐ加盟店が発足し、ふぐ料理を扱う宿泊施設が増えた。ふぐを食べないといわれる中京圏には、試みに1994(平成6)年に名鉄と旅館組合が、電車と高速船、宿泊をパックにした「ふぐづくし」プランを売り出し宣伝したところ、マスコミが取り上げて大ヒットとなった。こうして名古屋方面から多くの人たちが、日間賀島へとフグ料理を食べに来るようになった。従来は訪問者の少ないオフシーズンの11、12月が、忘年会シーズンと重なり、観光のオンシーズンとなった。
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みどころ

東港と西港で、愉快なタコのモニュメントが迎えてくれる。10月になると、あちこちでタコの手足を伸ばしたタコ干し風景が見られるが、この様が「引っ張り蛸」の語源となった。日間賀島は漁業が盛んで、漁業協同組合が観光への理解があり、観光協会と二人三脚で島の観光事業に取り組んでいる。フグ料理を提供する民宿や料理店でも、漁家の女性たちが大活躍をしている。