鳳来寺山ほうらいじさん

JR飯田線本長篠駅から豊鉄バス(田口行き)で約10分。鳳来寺バス停で下車。門谷の町並みを北に進むと、標高695mの急峻な鳳来寺山が眼前にせまる。鳳来寺山は旧鳳来町の象徴ともいうべき山で、愛知県の県鳥で「ブッポウソウ」*の鳴き声で知られるコノハズクの生息地としても知られる。
 表参道を5分ほど歩くと、樹齢1400年と推定されるネズの樹がある。さらに10分ほど歩くと、1,425段の石段となる。鳳来寺山自然科学博物館もある。杉木立の中、石段を表参道2丁目まで登ると、国の重要文化財である仁王門*に着く。さらに日本名木百選にも数えられる樹齢800年の傘杉をすぎ、登り切ったところに本堂がある。
 鏡岩とよばれる大岩壁を背に立つ鳳来寺は、文武天皇の702(大宝2)年、利修仙人による開山、のち源頼朝の再興と伝わり、利修仙人作の本尊薬師如来を祀る。古来、峰の薬師と呼ばれ、薬師信仰と山岳修験道の霊山として信仰を集めた。江戸時代以降は、徳川家康の縁起*によって幕府の保護を受け、3代将軍家光のときには21院坊、寺領1,350石という盛大さであった。しかし、明治維新を境に衰微の一途をたどり、現在は本堂・仁王門・鐘楼・奥ノ院以下2・3の小堂と塔頭2院を残すのみで、参道沿いに立つ院跡・坊跡の碑に盛時の面影をしのぶことができる。本堂は1974(昭和49)年に再建された。
 本堂から200mほど参道を東に進むと、これも国の重要文化財である華麗な東照宮*になる。
 鳳来寺山は紅葉の名所として知られる。
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みどころ

健脚な人は、門前町の門谷から杉木立におおわれた1,425段の階段を登り、鳳来寺の仁王門、本堂に到達してほしいが、足に自信のない人は、車利用で鳳来寺山パークウェイがある。パークウェイの駐車場からは10分で東照宮、15分で鳳来寺になる。このルートから鳳来寺山の鏡岩に抱かれた鳳来寺の大観が味わえる。ほかに東海自然歩道から訪れることができる。
  鳳来寺山はいつ訪れても静寂な雰囲気で出迎えてくれるが、1月3日には本堂前で、三河の田楽の一つである鳳来寺田楽が、地元の人々を中心に奉納される。
 コノハズクの声を聞くには5月から8月の晴れた日の深夜、紅葉の名所でもありモミジ探勝には鳳来寺山もみじまつりの11月から12月上旬を狙っておとずれるのもよい。
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補足情報

*ブッポウソウ:”ブッポウソウ”と鳴く声が、仏教の三宝”仏・法・僧”に似ていることから霊鳥として古来珍重されてきた。しかし、1935(昭和10)年のラジオ放送(NHK名古屋放送局)をきっかけに、この声の主がコノハズクあることが判明した。以後、コノハズクを「声の仏法僧」、ブッポウソウを「姿の仏法僧」と呼び分けるようになった。鳳来寺山では5~8月の晴れた日の真夜中、山腹の東照宮や地獄谷付近で、コノハズクの鳴き声が聞けることもある。
*仁王門:徳川3代将軍家光の寄進によって建てられた入母屋造り、銅板葺、蟇股の斗拱(ときょう)に天竺様式が見られる朱塗りの重層楼門である。
*徳川家康の縁起:松平広忠と夫人於大の方が鳳来寺の薬師如来に子宝を祈願して家康を授かったという。
*東照宮:家康と鳳来寺の関係(縁起)を知った家光が本堂修復と東照宮の建立を決意した。1650(慶安3)年7月に建立に着手、家光は完成を待たずに亡くなったが、翌年9月に完成。本殿の形式は、日光東照宮の権現造を模し、本殿内に安置した御宮殿と神像は、江戸城内紅葉山御殿に安置してあったものを移した。さらに4代将軍家綱をはじめ諸大名からは太刀や灯籠などが献上された。その後も、江戸幕府によって10回もの大修理が行われた。1953(昭和28)年、本殿をはじめ6棟が国の重要文化財に指定された。1955(昭和30)年、御供殿(ごくうでん)は失火により焼失。2002(平成14)年から2年かけて平成の大修理が行われた。
関連リンク 新城市(WEBサイト)
参考文献 新城市(WEBサイト)
鳳来山東照宮(WEBサイト)
あいち観光ナビ(一般社団法人 愛知県観光協会)(WEBサイト)
文化財ナビ愛知(愛知県)(WEBサイト)
『愛知県の歴史散歩 下』 愛知県高等学校郷土史研究会=編 山川出版社

2024年05月現在

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